研究課題/領域番号 |
26460320
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片渕 俊彦 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80177401)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマローゲン / ミクログリア / NF-κB / c-myc / G蛋白結合型受容体 / shRNA / Akt / CREB |
研究実績の概要 |
培養神経において、リポポリサッカライド(LPS)やサイトカイン投与による炎症刺激を与えたところ、Pls合成酵素であるglycerone phosphate O-acyltransferase (GNPAT)の発現が有意に抑制された。そのメカニズムとして、炎症刺激によって活性化されたNF-κBがc-mycタンパクを誘導し、c-mycがGNPATのプロモーター領域に結合してGNPATの発現を抑制することが明らかになった。また、GNPATの発現抑制は、マウスにおいてLPSの末梢投与、拘束ストレス、および老化によっても起こることを示した(論文準備中)。 前年度において、Plsを培養神経細胞に投与するとAktやウERK1/2などが活性化され、その結果抗炎症作用やBDNFの発現が増強することが明らかになった。ある種の脂肪酸や血小板活性化因子などのグリセロリン脂質の一部がG蛋白結合型受容体(GPR)を介して細胞内シグナルを惹起することが知られていることから、Plsによるシグナル伝達に関して、G蛋白の関与を検討したところ、G蛋白阻害剤であるGDPβSによってPlsによるAktおよびERK1/2の活性化が抑制された。そこで、約20種のオーファンGPRのうち、培養神経細胞において発現が認められる10種について、それらのsh-RNAレンチウイルスベクターを作成し、発現をノックアウトしPlsを投与した。その結果、GPR1, GPR19, GPR21, GPR27およびGPR61のノックダウン細胞では、PlsによるAktおよびERK1/2の活性化が著明に抑制されることが明らかになった。一般的にGPRはヘテロまたはホモダイマーを形成して受容体機能が発揮されることから、Plsがこれら数種のGPRによって細胞内シグナル伝達を行っている可能性が示唆された(PLoS ONE, 2016)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とした実験はほぼ実行できている。欧文学術誌(PLos ONE)に投稿した。引き続き論文を投稿予定である。 特に問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
Plsの細胞内シグナル伝達機序について、細胞膜上におけるPlsの分布とリピッドラフトとの関連を検討中である。 さらに詳しく検討を加え、特にリピッドラフトに多いとされるBDNF受容体やβおよびγセクレターゼとPlsとの関連や、PlsによるNF-κBの活性化機序、βアミロイド蛋白の生成期所との関連について、検討する要諦である。 一方、shRNAを両側海馬に微量注入し手作成するPls合成酵素ノックダウンマウスや、逆にゲノム編集によるノックインマウス、さらに今回明らかになったPlsのシグナル伝達に関与するオーファンG蛋白結合型受容体のノックダウンマウスを作成し、その機能について、in vivoのレベルでの検討を試みる予定である。以上から、Plsの中枢神経系における役割と、神経炎症機序との関連を包括的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年1月以降、消耗品購入について、やや控えめにしており、そのために予定よりやや少ない物品費で実験ができた。
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次年度使用額の使用計画 |
実験は引き続き行っており、最終年度の物品費として使用する予定。
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