研究課題/領域番号 |
26460324
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研究機関 | 日本女子体育大学 |
研究代表者 |
佐藤 耕平 日本女子体育大学, 体育学部, 准教授 (00409278)
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研究分担者 |
定本 朋子 日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (30201528)
小河 繁彦 東洋大学, 理工学部, 教授 (80553841)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 椎骨動脈 / 低形成 / 動的血流調節機能 / 高炭酸 / 過呼吸 |
研究実績の概要 |
【研究背景】脳に血液を供給する血管は主に内頸動脈経路と椎骨-脳底動脈経路(左右の椎骨動脈が合流し脳底動脈となり脳幹・小脳領域に血液を供給する経路)に大別される。これまでの知見では、椎骨動脈は解剖学的に非常に多様であることが報告されている。一般的に、左の椎骨動脈が右に比べて血管径が太く血流量も多いことが知られている。また、健常人においても約5%の確率で片側の椎骨動脈の発達不全つまり低形成(Hypoplasia)が認められ、最近の報告では、脳幹領域における脳卒中や、偏頭痛のリスクファクターとなる可能性が指摘されている。しかしながら、椎骨動脈の低形成や血流低下が脳における動的な血流調節機能に与える影響は現在のところ検討されていない。【目的】本研究では、椎骨動脈の低形成および血流不全が、動脈血二酸化炭素濃度(PaCO2)の変化に対する血流の反応性(CO2 Reactivity;動的な脳血流調節の指標)に及ぼす影響を検証した。【方法】超音波診断装置によるスクリーニングにより、片側の椎骨動脈に低形成が認められた若年女性8名(HYPO群)、両側に低形成が認められ血流低下(<100mL/min)を示した6名(LOW群)、コントロール12名(CONT群)に振り分けた。通常呼吸時、高CO2吸引時、過呼吸時(低CO2)の椎骨動脈血流量を測定し、呼気終末CO2分圧との関係性からCO2 Reactivity(%/mmHg)を算出した。【結果】HYPO群の低形成側のCO2 Reactivityが、対側に比べ有意に低かった。LOW群においては、両側共にCO2 Reactivityの低下が認められた。また、CONTにおけるCO2 Reactivityに左右差は認められなかった。【結論】本研究から、椎骨動脈の低形成や血流低下は、脳における動的な血流調節機能を低下させることが明らかになった。この機能低下は、椎骨-脳底動脈経路における血流調節を阻害し、様々な疾患の発症リスクを高める可能性を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在のところ、椎骨動脈の低形成および血流不全が動的血流調節機能を低下させることが明らかになった。その結果は、すでにClin Physiol Funct Imaging. 2014:30.( doi: 10.1111/cpf.12179)に論文としてアクセプトされている。故に、単年度において論文掲載まで到達していることから、当初の計画以上に研究は進捗しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、椎骨動脈の低形成および血流不全が運動時の脳血流調節にどのような影響をもたらすかを明らかにするとともに、運動トレーニングの効果を検証する。特に、既に明らかになった血流不全群えのトレーニング効果に注目し研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究がスムーズに進行したため、当初の予想よりも消耗品および被検者謝金の使用が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、来年度の物品購入費および被検者謝金に当て適切に使用する。
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