研究課題/領域番号 |
26460326
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
重吉 康史 近畿大学, 医学部, 教授 (20275192)
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研究分担者 |
鯉沼 聡 近畿大学, 医学部, 講師 (10340770)
池上 啓介 近畿大学, 医学部, 助教 (10709330)
筋野 貢 近畿大学, 医学部, 助教 (30460843)
升本 宏平 近畿大学, 医学部, 助教 (60580529) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 概日リズム / 視交叉上核 / 網膜 / Dead zone / メラノプシン / GABA / 網膜神経節細胞 |
研究実績の概要 |
網膜の光反応性についての検索 当初計画:網膜における光入力マーカー分子の探索から時刻依存性の情報入力の有無を検討する。さらにメラノプシン含有細胞を抗体にてラベルし、二重染色免疫組織化学法を用いて、cFosタンパクを観察した。これによって網膜における光照射後の網膜神経節細胞におけるcFOS発現に位相依存性があることが発見された。cFOSの発現におけるDead zoneの存在も確認できた。この細胞は視交叉上核に投射する細胞であり、網膜のレベルで光入力が概日リズム位相依存性に制御されていることを示している。(しかし、視交叉上核におけるゲート機構の存在を否定するものではない。ゲート機構が視交叉上核と網膜の両者に併存する可能性がある。) 現在までに視交叉上核において、明瞭にDead zoneをとらえそれをマーカー遺伝子、マーカー蛋白発現レベルで検出できた。マーカーとしては再早期遺伝子であるcFOSやPer1, Per2遺伝子、PER1, PER2蛋白を用いた。最近我々の教室でPER1、PER2抗体を用いて視交叉上核におけるこれらの時計関連蛋白の発現を検出することに成功した。現在までに、PER1, PER2蛋白については免疫組織化学法に好適な抗体を入手することが難しかったが、これを用いてPER1, PER2の共存についても検討を進めることが可能となった。視交叉上核における光感受性をこのような多様なマーカー蛋白を用いて検討できる素地が作成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、網膜の光照射による応答の検索について大きな進歩があった。網膜に対するメラノプシンなどの光応答関連遺伝子発現の局在をin situ hybridization法や免疫組織化学法を用いて検討する系を確立した。これによって網膜における光照射後の網膜神経節細胞におけるcFOS発現に位相依存性があることが発見された。cFOSの発現におけるDead zoneの存在も確認できた。この細胞は視交叉上核に投射する細胞であり、網膜のレベルで光入力が概日リズム位相依存性に制御されていることを示している。(しかし、視交叉上核におけるゲート機構の存在を否定するものではない。ゲート機構が視交叉上核と網膜の両者に併存する可能性がある。) 光応答のマーカー遺伝子としてcfosがDead zoneの検出においては有効であることを確認した。cfosの網膜内局在をin situ hybridizationやその翻訳産物であるcFOSを免疫組織化学法で検出することによって、概日リズムがいかにして網膜や視交叉上核の応答を制御しているかについての知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.研究の推進に基本的手技手法を獲得したので、以降はDead zoneを作り出す領域の局在をさらに詳細にすることを目標として進める。現在我々が得た知見からは、二つの仮説がなりたつ。すなわちゲートは網膜のみに存在するという仮説、および網膜と視交叉上核の両者にゲートが存在するという仮説である。 視交叉上核の解析については、視交叉上核にゲートが存在するかどうかを明らかにするためには視交叉上核からのグルタミン酸やPACAPの検出が必要である。しかし、いま存在する技術では脳深部にある視交叉上核に存在する網膜神経節細胞の軸索終末からのグルタミン酸の放出量は検討できない。よって、視交叉上核のスライス培養にグルタミン酸を作用させて、その反応を検出することによって、視交叉上核においてdead zoneが構築されているかどうかを検討する。2.細胞内情報伝達機構については網膜、視交叉上核およびメラノプシン陽性神経節細胞における細胞内情報伝達について検討する。特にcAMP, MAPKといった物質の光応答についての検索を行い、網膜メラノプシン陽性神経節細胞および視交叉上核腹外側部ニューロン内情報伝達の遮断によってDead zoneが形成されている可能性について検討を進める。 3.GABAによる神経活動の抑制が生じている可能性についても検討する。 網膜においては主にグルタミン酸が神経伝達物質として用いられているが、アマクリン細胞はGABA含有神経細胞であり網膜の細胞の応答性を規定している。さらに視交叉上核はすべてのニューロンがGABA含有神経細胞であり、これらのGABAニューロンの光情報に対する応答性の変化によって、位相特異的な反応が生み出されている可能性について検討を加えたい。よって、GABAの投与、およびGABA受容体のブロックによって、人工的にdead zoneを作り出す、あるいは消滅させることを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
二年目の研究計画に従い、必要とされる消耗品を年度内に購入した。その結果、未使用の研究費が生じた。今年度は早期にcFOSを網膜におけるDead zone (ゲート)のマーカーと定めることができ、それを用いて機構の解析に集中した。そのため遺伝子マイクロアレイを用いてのマーカーを用いての遺伝子の抽出を行わなかった。よって、一部の費用の使用を次年度に持ち越した。今後、細胞内情報伝達機構の解析とともに、トランスクリプトームの詳細な解析が必要であり、次年度に使用予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度研究計画に従い、消耗品に使用する予定である。
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