研究課題/領域番号 |
26460328
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
河原 幸江 久留米大学, 医学部, 講師 (10279135)
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研究分担者 |
河原 博 鶴見大学, 歯学部, 教授 (10186124)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グレリン / オピオイド受容体 / ドーパミン / コカイン / 報酬 / 摂食 |
研究実績の概要 |
【背景と意義】私たちは以前に、摂食亢進性ホルモンであるグレリンが、報酬効果の低い食物が摂食された場合はμオピオイド受容体シグナルを、報酬効果の高い食物が摂食された場合はκオピオイド受容体シグナルを介して報酬関連ドーパミン神経活性を制御することを報告している。κオピオイド受容体は食物や薬物の依存形成に重要な役割を担うと考えられている。したがって、生体内グレリンを欠損したマウスでは、報酬刺激に対してκオピオイド受容体シグナルが増強されにくいためコカインやショ糖への依存も形成されにくいと仮定し、この仮説を検証した。 【方法と結果】グレリン欠損マウスの報酬関連ドーパミン神経活性を調べるために、食物報酬刺激による側坐核ドーパミン遊離量の変化をマイクロダイアリシス法で測定した。薬物依存はストレス経験により増強することがわかっている。そこで、グレリン欠損マウスは、社会的敗北ストレス暴露後のショ糖およびコカインに対する依存形成の増強が、減弱するかどうかを調べた。 1) 餌への暴露刺激(報酬刺激)に対するドーパミン遊離量の変化は、グレリン欠損マウスで減弱していたが、摂食量や摂食リズムは野生型マウスとの間に差がなかった。 2) 社会的敗北ストレス暴露後の、コカインとショ糖による条件付け場所嗜好性、およびコカイン連続投与によるコカインに対する行動量増加(コカイン感受性の増強)は野生型マウスとの間に差がなかった。 【考察】グレリン欠損マウスは、報酬刺激によるドーパミン遊離量の変化が少なかったことから、生理的な報酬刺激に対する反応は減少していることが示唆された。しかし、グレリン欠損マウスの行動学的評価では、慢性的なストレスに対して野生型と同じような感受性を示し、ストレス後のコカインやショ糖に対する嗜好性にも差がなかった。したがって、本研究で当初の仮説を支持する結果を得ることができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究当初に立てた仮説、すなわち、グレリン欠損マウスは社会的敗北ストレスに耐性を示し、ストレスによる薬物依存増強が減弱していのるかを、神経化学的手法と行動学的手法で検証した。仮説を支持する結果を得た場合は、ストレスによる薬物依存増強をグレリン受容体拮抗薬で拮抗できるのではないかという目的で研究を実施した。しかし、グレリン欠損マウスにおいて、野生型マウスと同様の感受性と薬物依存行動を示し、仮説を支持する結果を得ることができなかった。 このように、当初予測していた結果とは異なっていたため、計画通りに研究をすすめることができなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
グレリン欠損マウスは社会的敗北ストレスに対して野生型と同様の行動変化を示したため、ストレス負荷による方法を変更する。残りの研究期間では、ストレス負荷とは逆に、自由運動環境(回転ホイールなど)といった報酬関連刺激を負荷する。この結果によって、運動による食物嗜好の変化におけるグレリンのシグナル関与を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の推進に伴い、当初予定していた年度末の執行を控えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の購入に使用予定。
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