研究課題/領域番号 |
26460332
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大津 浩 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60250742)
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研究分担者 |
平澤 典保 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80181155)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒスタミン / レポーターマウス / アレルギー / 蛍光 |
研究実績の概要 |
ヒスタミンの生体内での産生調節機構については不十分な点が多く、本研究は産生源を明らかにすべくHDC遺伝子の発現をモニターするレポーターマウスを作製し、産生細胞および産生の調節機構を明らかにしようとしている。ヒスタミンは必須アミノ酸の一種であるヒスチジンから生体内では唯一の酵素であるヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)を介して産生されるためこの遺伝子の発現をモニターすることによりヒスタミンの産生について考察することが可能である。交付申請書にも記載した通り、脳視床下部や胃体部におけるGFP発現は免疫染色で確認しているがHDC産生細胞と一致しているかどうかについて確認が必要であった。そこで本研究ではレポーターマウスから摘出した胃におけるGFPとHDCの免疫染色を遂行した。近接する切片を使ってGFPの一次抗体(Cell Signaling Technology)とHCDの一次抗体(Acris Antibody)を反応させ、その後、ペルオキシダーゼを標識した二次抗体と反応させ、DAB染色キットを用いて二次抗体が結合した部位を褐色に発色させた。染色パターンはGFPとHDCで一致していることが判明した。また小腸壁での細胞においては、肥満細胞の他に、好酸球や好塩基球にも蛍光の発光がみられ、現在まで考えられていた以上に多種類の血液細胞にヒスタミンが存在する可能性が出てきている。このため、今後様々な病態モデルを使った実験においても新たなヒスタミン産生細胞を認める可能性が高いと考えている。そこで、当該年度は2, 4, 6-trinitro-1-chlorobenzene (TNCB)を繰り返しマウス背部に塗ることによって、マウスに慢性アレルギー性接触皮膚炎を誘導し、皮膚におけるGFP陽性細胞を、抗GFP抗体を用いた免疫組織学的な染色方法と、蛍光顕微鏡による緑色蛍光の確認を行ない、慢性アレルギー性皮膚炎におけるHDCの発現細胞を観察する。さらに、その後、皮膚の構成細胞をFACSによって分画し、HDC陽性細胞の同定を行なう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書には研究の目的として、ヒスタミンの産生細胞の解明やHDC遺伝子の転写調節機構の解明が掲げられている。27年度はそのなかで、トランスジェニックマウスを用いた蛍光発光の確認を終了し、種々の病態モデルマウスにおける発現遺伝子の解析をすることとなっている。実績の概要で記載した通り、胃の染色においてはほぼ確実にGFP発現細胞とHDC発現細胞は一致した。ドイツのLeibniz-Center for Medicine and BiosciencesのDr. Zane Orinskaとのやりとりで、ヒスタミンを特異的に染色するHistamine Blueの存在が明らかになり、現在試薬を取り寄せたが、入手後この試薬ではHistamineが確実に染まらなことがわかった。そこで、現在は2, 4, 6-trinitro-1-chlorobenzene (TNCB)を繰り返しマウス背部に塗ることによって、マウスに慢性アレルギー性接触皮膚炎を誘導し、皮膚におけるGFP陽性細胞を、抗GFP抗体を用いた免疫組織学的な染色方法と、蛍光顕微鏡による緑色蛍光の確認を行ない、慢性アレルギー性皮膚炎におけるHDCの発現細胞を観察する。さらに、その後、皮膚の構成細胞をFACSによって分画し、HDC陽性細胞の同定を行なう。この病態モデルを中心に、転写レベルでのコントロールとヒスタミン量との関連性も染色によって明らかにしようとしている。このことによって、転写のコントロールばかりではなく、ヒスタミン産生の多段階的なメカニズムに迫れる実験系を構築できる可能性が出てきている。
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今後の研究の推進方策 |
①TNCBを繰り返しマウス背部に塗ることによって、マウスに慢性アレルギー性接触皮膚炎を誘導し、皮膚におけるGFP陽性細胞を、抗GFP抗体を用いた免疫組織学的な染色方法と、蛍光顕微鏡による緑色蛍光の確認を行ない、慢性アレルギー性皮膚炎におけるHDCの発現細胞を観察する。さらに、その後、皮膚の構成細胞をFACSによって分画し、HDC陽性細胞の同定を行なう。 ②FACSを用いることによって、基礎実験として、現在まで小腸壁細胞や骨髄細胞における蛍光発光について詳しく見ているところであるが、これまでの枠を超えて多くの種類の細胞でヒスタミン産生が起きている可能性が出てきた。GFP発光と細胞表面の特異抗原に対する蛍光色素抗体を用いることによって、どのような細胞からヒスタミンが出ているのかについて明らかにしていく。そこで、①の実験の続きとして慢性アレルギー性接触皮膚炎において、いままではあまり注目されていなかった好酸球やT細胞などでヒスタミン産生を観察する。 ③ 種々の疾患モデルマウスにおけるヒスタミンの役割について、アレルギー反応モデルマウス、神経疾患モデルマウス、動脈硬化モデルマウスなどを用いて明らかにしていく。例えば、アレルギー反応の早期の感作相にもヒスタミンの役割が重要であることが判明しつつある。そのなかで制御性T細胞に対してヒスタミンの役割について解明していく。
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