研究課題
中枢神経系における血流制御は、神経細胞へのエネルギー供給を担い、神経活動を維持するために重要な機構である。この血流制御機構を明らかにするため、当該年度では、研究実施計画に基づき、本研究で新たに実現した蛍光カルシウムイメージング法によりin vivoにて捉えた血管平滑筋の収縮・弛緩動態と、アストロサイト・神経細胞の活動、および脳血流動態との比較を行った。まず、当該年度までの蛍光カルシウム可視化実験で得られたデータを用い、各種の細胞について活動動態の相関解析を行った。この解析から、アストロサイトと神経細胞は、ともに血管平滑筋の収縮・弛緩に対し、重要な働きを示すことが明らかになった。さらに、血流制御に関わる細胞間シグナル伝達の経路を明らかにするため、神経伝達物質の受容体阻害薬や合成酵素阻害薬等を用いた薬理実験を行い、シグナル伝達経路の同定にも取り組んだ。その結果、神経細胞から血管平滑筋へ繋がるシグナル伝達には、一酸化窒素が重要であり、またアストロサイトによる血流動態の制御には、ノルアドレナリンが重要なシグナル分子であることが明らかとなった。脳血流制御機構は、中枢神経系による情報処理に深く関わるばかりでなく、血流制御の破綻は、さまざまな疾患に関与することが知られている。このため、本研究で得られたアストロサイトと神経細胞による脳血流制御機構についての新しい知見は、病態の解明や治療法の開発にもつながる重要な知見である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
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