研究課題/領域番号 |
26460336
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
服部 裕一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50156361)
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研究分担者 |
大橋 若奈 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (50381596)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | GRK2 / β-Arrestin2 / 敗血症 / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
敗血症性ショックおよび多臓器不全に対する堅固な治療法は未だに確立されていない。GRK2は,Gタンパク共役型受容体(GPCR)をリン酸化し,β-arrestinを受容体に結合させ,GPCRのシグナル伝達の制御する役割を果たすが, GRK2が種々の細胞内タンパク質と相互作用することが報告され始め,GPCRリン酸化以外の病態生理的機能を持つことが指摘された。GRK2が種々の炎症疾患においてその発現が変化しており,炎症の病態形成に重要な働きをしていると考えられているので,今年度は,敗血症時のGRK2の病態生理学的意義について,GRK2阻害薬を用いて検討した.8-12週齢の雄性BALB-Cマウスに盲腸結紮穿孔(CLP)を行い,敗血症を生じさせた。敗血症マウスのGRK2阻害薬であるmethyl 5-[2-(5-nitro-2-furyl)vinyl]-2-furoate投与群は,CLP直後に200 mg/kgを尾静脈より投与し,12時間後に再び静注した。CLP後,一過性だが有意にGRK2活性は増強し,GRK2膜移行は増加した.血中TNF,IL-1β,IL-6,MCP-1の敗血症による著明な上昇は,GRK2阻害薬投与により抑制された。さらに肺組織における炎症性サイトカイン mRNA増加も,GRK2阻害薬投与により減弱した。敗血症マウスの肺組織の炎症病理像および肺・脾臓で認められたアポトーシス発現増加は,GRK2阻害薬投与群で有意な阻止効果を示した。CLPにより無処置の場合には3日以内に90%以上死亡したが,GRK2阻害薬治療(56.4 ng/kg/day)は有意な改善を認めた。敗血症にみられる全身性炎症ならびにアポトーシス形成にGRK2は有意な役割を示しており,GRK2をターゲットとする敗血症への治療戦略は,今後有用な手段になり得るかもしれないと示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
GRK2阻害薬として知られているmethyl 5-[2-(5-nitro-2-furyl)vinyl]-2-furoateの敗血症モデルに対する治療効果の検討を終えることができた。加えて,GRK2ノックアウトマウスの作成も順調に進んでおり,平成27年度には,このトランスジェニックマウスを敗血症にした際の変化の検討に着手できる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) GRK2遺伝子改変マウスを用いて,CLP誘発性敗血症を作成し,血中や組織の炎症性サイトカインの変化や臓器傷害の程度を,WTマウスと比較検討し,GRK2の発現が低下した場合の敗血症の病態の変化を捉える。 (2) RAW264.7マクロファージ細胞培養株を用い,エンドトキシンを投与したときの,GRK2の発現,活性の変化をみるとともに,炎症や細胞生存に寄与する細胞内シグナルや転写因子の動態が,GRK2をノックダウンしたときにどのように変化するかをみて敗血症時のGRK2の分子病態機構を解明していく。
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