研究課題
アドレノメデュリン(AM)は、様々な生理活性を有するペプチド因子である。我々は、AMと、AM受容体結合蛋白の1つであるRAMP2 のノックアウトマウス(-/-)が、共に血管の発生異常により胎性致死となることから、AM-RAMP2系の血管新生、血管恒常性制御作用を明らかとした。一方、AM は様々な癌組織でも発現している。本年度の研究では、誘導型血管内皮細胞特異的RAMP2-/- (DI-E-RAMP2-/-)を樹立し、成体において血管特異的にRAMP2欠損を誘導することで、癌の増殖と転移における AM-RAMP2 系の意義を検討した。DI-E-RAMP2-/-では、皮下移植したメラノーマや肉腫の原発巣における血管新生と腫瘍増殖が抑制される一方で、足底部にメラノーマ細胞を移植し、一旦それを切除した後に生じる自然肺転移は著明に亢進していた。RAMP2欠損誘導後の肺では、細胞骨格異常を伴う内皮細胞の構造異常や血管透過性亢進が生じ、傷害を受けた血管壁では、炎症細胞の集簇を認めた。さらにDI-E-RAMP2-/-の肺では、S100A8、S100A9とその下流のSAA3などの腫瘍細胞遊走因子の高発現を認め、癌細胞が生着しやすい「転移前土壌」が形成されることが明らかとなった。一方原発巣の腫瘍血管では、血管内皮細胞が間葉系細胞マーカー陽性となり、細胞間接着が障害され異常増殖を認めるなど、内皮間葉系転換(EndMT)亢進を伴う血管構造不安定化が確認され、これも癌の転移促進に寄与することが明らかとなった。一方RAMP2 過剰発現マウスでは、腫瘍細胞の血管内皮への接着や、遠隔臓器への転移が抑制され、生存率が改善し、AM-RAMP2 系の活性化による癌転移抑制効果が示された。AM-RAMP2 系の血管恒常性機構に着目することで、原発巣摘出後の転移予防のためのアジュバントセラピーなどに、その応用展開が期待される。
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Endocrinology
巻: 158 ページ: 印刷中
10.1210/en.2016-1510
10.1210/en.2016-1531
Cardiovasc Res.
巻: 111 ページ: 398-409
10.1093/cvr/cvw166
http://www7a.biglobe.ne.jp/~shindo/