研究課題/領域番号 |
26460338
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
南 学 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90511907)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マクロファージ / 慢性炎症 / シグナル情報伝達系 |
研究実績の概要 |
EPRAP/FEM1Aは、マクロファージにおいて、プロスタグランジンE2 (PGE2) 受容体であるEP4受容体の新規細胞内ドメイン結合蛋白として同定され、NF-κB1 p105との結合を介して、炎症性刺激後のMEK-ERK経路の活性化を特異的に抑制する (Minami M, et al. J Biol Chem, 2008)。 マクロファージの活性化制御は、炎症性疾患のみならず、2型糖尿病や動脈硬化性疾患、悪性腫瘍など、難治性慢性疾患の治療標的となりうる。EPRAPは、炎症性刺激後のマクロファージ活性化を負に制御する、言わば内在する「ブレーキ」に相当し、EPRAPが介在する細胞内シグナル伝達機構の解明は、マクロファージの活性化のメカニズムの理解に重要であるだけでなく、これら慢性疾患の新たな治療標的としても期待される。 本研究の目的は、EP4受容体-EPRAP経路の選択的賦活化によるマクロファージ活性化制御を標的とした治療法開発のため、①EP4-EPRAP経路の活性化の指標を確立し、②EPRAP下流の標的炎症制御シグナルを、病態における重要性とともに詳細に検討することである。すでに我々は、独自に作成した遺伝子改変動物、すなわちEPRAP遺伝子欠損マウス、およびマクロファージ特異的EPRAP強制発現マウスを用いた慢性炎症モデル動物の表現型から、in vivoにおいて、マクロファージの活性化制御と病態進展におけるEPRAPの重要な役割を明らかにしている (論文投稿中)。 平成26年度は、当初の研究計画通り、多数のリコンビナント・ミュータントEPRAPを作成し、それらの機能解析から、EPRAPの抗炎症作用発現に重要な翻訳後修飾部位を同定した。さらに、これら翻訳後修飾を担う酵素酵素も同定し、BLM誘発マウス肺炎症モデルなどin vivo慢性炎症モデルでの解析も並行して行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、本研究の最初のステップであるEPRAPの翻訳後修飾について極めて順調に進展し、これらの研究成果は下記学会にて発表を行い、現在国際英文誌への投稿の最終準備段階である。また、当初の研究計画に従い、EPRAP遺伝子改変動物を用いて、2型糖尿病や動脈硬化性疾患モデルの作製も行い、並行して表現型の解析も進めている。 一方、TOF MS/MSによる質量分析によるEPRAP結合蛋白の網羅的解析については試料の最終準備段階であり、下流の標的分子の同定など、in vitroでの解析と検証は現在も進行中の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、当初の計画に従い、EPRAPの翻訳後修飾と細胞内動態や下流標的分子との関連の解明につとめ、これらの検討を通じて、「EPRAP活性化経路」の指標確立を目指す。さらに、EPRAP遺伝子改変動物を用いて、2型糖尿病や、動脈硬化モデルにおけるEPRAPの表現型とメカニズムの解析を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、疾患モデルの作成ならびにEPRAPの翻訳後修飾の解析に注力し、その結果、上述の通りこれらの研究課題に関して順調に研究の進展をみた。研究経費の内訳では、旅費については、研究の進捗状況および内容の新規性を鑑み、共同研究者との打合せなど最小限の執行にとどめた。動物の管理費や共同機器室使用費等を、その他として執行した。網羅的解析など次年度以降の研究に必要な経費を確保するため、物品費 (研究消耗品購入費) についても、新規購入を極力控え同等品への切り替えなどの努力を行い、最小限の支出にとどめた。
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次年度使用額の使用計画 |
十分な研究成果を得るべく、繰越分と合わせ、次年度以降も進捗など研究全体を俯瞰し計画的にかつ適切に執行する。
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