研究課題
内耳有毛細胞特異的Cdc42-KOマウスが、1.「正常聴覚獲得後に多彩な聴毛の形態異常による緩徐進行性の高度難聴を呈する」、2.「Cdc42は聴毛の形成過程よりむしろ維持期に機能する」、3.「Cdc42は聴毛膜に局在する」、4.「その活性化は聴毛の上半(先端)部の方が下半(基)部よりも強い(FRET法により証明)」等の4つの事実を世界に先駆けて明らかにし、報告した。本研究は、有毛細胞特異的Cdc42 KOマウスが、後天(老人)性難聴のモデルとしても使用が可能で、補聴器以外有効な対処法のない老人性難聴の新規治療法開発に利用可能である。ヒトでは7種存在する活性酸素産生酵素(NADPH oxidase)の1つであるDuox(の内耳での発現を確認後、Duoxによる活性酸素産生メカニズムの解明を行った。Duoxは活性酸素種(ROS)の中でもスーパーオキシドではなくH2O2を特異的に産生することが知られていたが、そのメカニズムは不明であった。本研究で、Duox1, Duox2のA-loopのいずれもがDuoxの特性であるH2O2の特異的分泌に際し、スーパーオキシドのH2O2への変換に関与することを明らかにした。近年、活性酸素種が老人性難聴、抗癌剤やアミノグリコシド系抗生物質による難聴の発症に関与するとの報告が蓄積されるようになってきており、本研究が、内耳における活性酸素種由来の聴力障害の発症メカニズムの解明の糸口になる可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
内耳有毛細胞特異的Cdc42-KOマウスが、1.「正常聴覚獲得後に多彩な聴毛の形態異常による緩徐進行性の高度難聴を呈する」、2.「Cdc42は聴毛の形成過程よりむしろ維持期に機能する」、3.「Cdc42は聴毛膜に局在する」、4.「その活性化は聴毛の上半(先端)部の方が下半(基)部よりも強い(FRET法により証明)」等の4つの事実を世界に先駆けて明らかに出来た。また、内耳にも発現する活性酸素産生酵素の一つであるDuoxについて、Duox1, Duox2のA-loopのいずれもがDuoxの特性であるH2O2の特異的分泌に際し、スーパーオキシドのH2O2への変換に関与することを明らかに出来た。
研究計画は順調に進んでいるので、今後、耳石形成に必須であるROSの発生源細胞の同定とROSを利用した耳石形成メカニズムの詳細解明に労力を集中していく予定である。具体的には、申請者が作製完了したマウス(ROS産生細胞が蛍光を発するマウス)を用いてROSの発生源細胞の同定を行い、ROSを利用した耳石形成メカニズムの解明には前記のマウスの内耳組織を用いたDNAマイクロアレイ法と質量分析法により行う予定である。これらが出来れば、メニエル病をはじめとする原因不明の平衡覚障害の解明と治療法開発に繋げることが夢ではない考えている。
2つのメインテーマのうち一方の研究成果を順調に出すことが出来たため、予想外に経費を節約できた。2つ目のメインテーマは、紆余曲折が予測され、来るべき障害に備えて、節約できた経費を次年度以降に繰り越しておくことにした。
内耳器官培養の回数を増加させるための経費、耳石の成分解析の外注依頼のための経費、走査顕微鏡を用いた実験のサンプル作成のための経費に用いる予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 3件)
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