研究課題
アクチン骨格を制御するRho-family GTPase のメンバーであるCdc42に注目し、内耳有毛細胞特異的にCdc42がKO されるマウスを作製し、「Cdc42-KOマウスが正常聴覚獲得後に多彩な聴毛形態異常による進行性高度難聴を呈する」、「Cdc42は聴毛の形成過程よりむしろ維持期に機能する」、「Cdc42は聴毛膜に局在し、その活性化は聴毛の上半部に強い」等の3つの事実を解明し報告した。この研究の過程で、新たに「Cdc42 KOマウスでは、RhoAシグナリングが亢進しており、これがCdc42-KOによる聴毛の形態異常の一因である」可能性を見出した。RhoAシグナルの下流には、直鎖状アクチン繊維の重合に関わるDIA1/DIAPH1が存在し、その点変異により、常染色体優性遺伝性感音難聴であるDFNA1が発症することが1997年に報告されていた。このDIA1変異によるDFNA1は、現在至るまで、コスタリカの1家系のみの報告に留まり、その病態も感音難聴でなく内リンパ水腫であるとの報告もあり、DFNA1が感音難聴かの議論のみでなく、DFNA1の存在自体にも疑問が呈されていた。そこで我々は、原因不明の難聴を呈する1120例の患者を対象に、次世代シークエンサーを用いたエキソーム解析を行い、新規のDIA1点変異を本邦の2家系で発見した。加えて、一分子蛍光イメージングなどの手法を駆使して、発見した新規DIA1点変異により生じる変異体が、恒常的活性化型変異体であることを明らかにした。更に、新規DIA1変異体を発現するトランスジェニックマウス(TG)を作製し、TGマウスが、ヒト患者の病態を非常によく再現し、高音域から始まり全音域に及ぶ進行性感音難聴を呈することを明らかにし報告した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
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