研究課題/領域番号 |
26460342
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森岡 徳光 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 准教授 (20346505)
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研究分担者 |
中島 一恵 (久岡一恵) 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 助教 (20393431)
仲田 義啓 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 教授 (40133152)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経障害性疼痛 / connexin43 / 脊髄アストロサイト / TNF / グルタミン酸トランスポーター / ユビキチン / プロテアソーム |
研究実績の概要 |
これまでの研究では、神経障害性疼痛時に認められる脊髄後角でのアストロサイトにおけるconnexin43(Cx43)発現の低下は、グルタミン酸神経伝達を亢進させることで痛みを発生していることを明らかにしている。本年度はどのようなメカニズムを介してグルタミン酸神経伝達が亢進されるのか検討した。その結果、Cx43 siRNAをマウス脊髄くも膜下腔内に投与することにより脊髄後角グルタミン酸トランスポーターGLT-1発現が有意に低下していることが明らかとなった。さらにマウス脊髄シナプトソームを用いた検討により、Cx43 siRNA処置によりグルタミン酸取り込み能も低下していることを明らかにした。 次に、脊髄後角でのCx43発現をアデノウイルスベクターを用いて回復させることによる疼痛緩和効果を検討した。その結果、Cx43発現アデノウイルスベクターを神経障害性疼痛モデルマウスの脊髄くも膜下腔内に投与することにより、脊髄後角でのCx43発現増加に伴って、痛みが緩和されることが明らかとなった。 さらにtumor necrosis factor(TNF)がCx43発現低下に関与していることをすでに明らかにしているが、TNF blockerであるetanerceptの効果も検討した。その結果、etanerceptを神経障害性疼痛モデルマウスの脊髄くも膜下腔内に投与することにより、脊髄後角のCx43発現低下が有意に拮抗され、痛みが緩和されることが明らかとなった。 加えて培養脊髄アストロサイトを用いてTNFによるCx43発現低下メカニズムの検討を行った。その結果、TNFはubiquitin-proteasome系を賦活化させることによりCx43分解を促進することで、Cx43発現量を低下させることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度研究において、神経障害性疼痛におけるconnexin43(Cx43)発現低下による疼痛発症メカニズムの大部分が明らかになった。さらにCx43発現低下を回復させることにより、神経障害性疼痛が緩和できる可能性も示唆することができた。また脊髄アストロサイトにおけるCx43発現低下に関与するメカニズムも明らかにすることができた。これらの成果は、Brain, Behavior, and ImmunityならびにBiochemical and Biophysical Research Communicationsに掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
脊髄アストロサイトにおけるconnexin43(Cx43)発現低下により如何なるメカニズムを介してグルタミン酸トランスポーターGLT-1発現が低下するのかを明らかにする必要がある。さらにCx43発現低下はGLT-1以外にも影響を及ぼすことで痛みを惹起している可能性についても検討する必要がある。 また脊髄後角Cx43発現回復作用が新たな鎮痛標的となる可能性が予想される。そこでCx43発現増加効果を有する低分子化合物の探索も行う必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた試薬の値段が予定より高騰したため、ほかの格安の類似薬に変更した。そのために差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は予定していた試薬を購入し、研究計画に沿って実験を遂行する予定である。
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