研究課題/領域番号 |
26460343
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
西山 成 香川大学, 医学部, 教授 (10325334)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腎臓病 / 糖尿病 / 臓器連関 / 高血圧 / SGLT2 / メタボリックシンドローム |
研究実績の概要 |
本研究期間の3年間では、「交感神経・腎内局所RAS・腎尿細管SGLT2」に着目し、「脳心腎・糖代謝連関」における役割や関連を明らかにすることを到達目標としている。 初年度では、糖代謝異常が生じる初期段階において、肥満で生じるインスリン抵抗性に伴って脳心腎の組織障害を生じるモデルラットにおいて、腎臓尿細管におけるSGLT2の発現が著名に増加していることを見いだした。さらに、その原因として、腎交感神経活性化が強く関与していることを明らかにした。 次年度では、肥満でインスリン抵抗性を生じるOLETFラットに食塩を負荷したモデルを使用し、観察される血圧の日内変動の欠損をともなったnon-dipper patternの血圧上昇に対してSGLT2阻害薬を投与すると、血圧の日内変動の正常化を伴った血圧低下を生じることを証明した。一方、すでに血圧が上昇しているメタボリックシンドロームモデル動物であるSHR/NDmr-cp(+/+)においても、SGLT2阻害薬の投与が血圧の日内変動の正常化を伴った血圧低下を示した。さらに興味深いことに、このような血圧に対するSGLT2阻害薬の作用は、利尿薬と極めて類似しており、実際、尿中のナトリウム排泄の増加を伴っていた。 そこで最終年度では、SGLT2阻害薬の尿細管に対する作用について、詳細なメカニズムを検討することを目的とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26・27年度に予定していた研究は順調に推移し、複数の国内外の学会発表と、4報の英文学術誌への論文を投稿している(うち2報がin-press)。 また、これが研究の中で予想を上回る新しい病態メカニズムの解明につながる成果も得ていることからも、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。 培養細胞を使用した実験については、SGLT2が十分に発現しているヒト近位尿細管細胞が見つからず、マウスの近位尿細管細胞を入手して実験を進める。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度ではSGLT2阻害薬の尿細管に対する作用について詳細なメカニズムを検討することを目的とし、前年度既に開始している麻酔したラットにおける腎クリアランス法を用いた研究を引き続き実行する。SGLT2阻害薬の急性静脈内投与によって生じる、腎血行動態と尿細管への影響を検討する。実験は正常ラットと5/6腎摘したラットの両方で行う。 培養細胞を使用した実験については、SGLT2が十分に発現しているマウスの近位尿細管細胞を入手して実験を進める。SGLT2の発現を確認した後、高血糖やSGLT2阻害薬投与による細胞のフェノタイプの変化、各種パラメーターの変化について検討する。 一方、臨床研究においてSGLT2阻害薬の腎保護作用が指摘されているので、動物実験モデルを用いて、これを検証する。使用する動物モデルは、腎虚血再還流モデルマウスと5/6腎摘したラットである。後者については、腎臓内レニン・アンジオテンシン系の変化についても併せて検討する。
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