研究課題
本研究では非選択生カチオンチャネルであるtransient receptor potential (TRP)チャネルについて強力な転写因子として機能するiPS因子がその発現を変化させるか明らかにすることである。TRPチャネルの転写調節機構についてはまだ不明な点も多く、研究の意義は大きい。H27年度は、H26年度に見出したヒト神経細胞におけるTRPM3チャネルの神経分化過程における発現増強について詳細に検討した。その結果、約20%の細胞で神経型細胞への分化によりTRPM3が発現増強することを見出した。またこの発現増強により、神経細胞は神経ステロイドに感受性となり、神経ステロイド投与により細胞内Ca濃度が上昇した。遺伝子発現プロファイルの解析結果から、TRPM3-9型のTRPM3チャネルの発現上昇が関与している可能性が示唆された。なおこの研究の過程で、ヒトTRPM3チャネルが非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)の一つであるジクロフェナクの標的となることも見出している(論文発表済み、Suzukiら2016)。最終年度のH28年度には、この神経分化誘導性のTRPM3発現上昇に、iPS因子がどのように関与するのか、また他のTRPチャネルの発現誘導との関係も含めて検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
H26年度の検討により、Klf4の強制発現がTRPM3チャネルの発現上昇を引き起こすことを見出しており、H27年度の結果から、神経分化とKlf4発現上昇、TRPM3発現増加が結びつく可能性が高い。
神経分化がKlf4を介してヒトの神経細胞においてTRPM3チャネルの発現を増加させることを、以下の実験で示したい。1.神経分化によりKlf4が増加すること、2.Klf4の遺伝子導入がTRPM3のタンパク発現およびチャネル機能発現を誘導すること、3.Klf4のTRPM3遺伝子上の結合部位の同定、などを進めたい。
論文掲載料の支払いが4月以降になったため次年度使用額が発生した。
論文掲載料が確定し4月末から5月中旬には事務処理が完了する予定である。H28年度分に関しては、細胞等の購入を予定しており、計画通り支出を終了する予定である。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 備考 (1件)
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