研究課題/領域番号 |
26460350
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研究機関 | 天理医療大学 |
研究代表者 |
金井 恵理 天理医療大学, 医療学部, 教授 (20372584)
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研究分担者 |
的場 聖明 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10305576)
金井 雅史 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70432416)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | がん / 薬物療法 / 心筋保護 / オートファジー |
研究実績の概要 |
本研究は、がん化学療法で現れる心筋障害の詳細なメカニズムと、化学療法の臨床で使われる薬剤についての心筋保護効果について、基礎と臨床両方のアプローチから、解明を進めるもので、平成26年度の研究実績は次のとおりである。 (1)基礎研究について まず、in vivoでは、抗がん剤によるマウス心筋障害モデルやミトコンドリア代謝調節因子の遺伝子改変マウス等を用意した。in vitroでは、初代培養心筋細胞、HL-1心筋細胞、各種がん細胞cell lineなどに遺伝子導入やノックダウン法を用いた培養細胞を用意した。次に、これらを用いて、特にクルクミンによる心筋オートファジー、心筋細胞アポトーシスに対する影響と心不全の進展に関する解析を行った。この結果、クルクミンは心筋オートファジーを介して、ドキソルビシンによる心筋アポトーシスおよび心不全の進展を抑制し、結果的にドキソルビシン心筋症マウスの生存率を上昇させた。この結果は、J Clin Exp Cardiolog 2015に掲載となった。また、心筋オートファジー惹起による、細胞内シグナル伝達とミトコンドリアの質的管理への影響について、交感神経惹起による心不全モデルを用いて検討し、AKT経路の惹起が心筋オートファジーを引き起こし、心保護に働くことを示した。この結果は、Biochem Biophys Res Commun. 2015に掲載となった。 (2)臨床研究について がん化学療法におけるG-CSFの心筋保護効果を検討するため、天理よろづ病院で抗がん剤治療を受ける乳がん患者を対象に、観察型臨床研究を構築し、天理医療大学および天理よろづ相談所病院の倫理員会の承認を得た。また、早期の心筋障害を検出する有効な心臓超音波パラメーターについて、レトロスぺクテイブに調査しているところである。この中間報告は、日本循環器学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎研究については、複数の心不全モデルマウスやノックダウン法を用いた培養心筋細胞等を用意し、当初の計画より早く年度前半には一定の結果を得ることができ、そののち国内外の研究者らと議論を重ね、結果的に2本の国際雑誌掲載となった(J Clin Exp Cardiolog 2015、Biochem Biophys Res Commun. 2015)。 一方で、臨床研究については、申請者の所属機関変更もあり、一から臨床研究グループを構築し、臨床研究方法の段取りをし直し、年度内に天理医療大学および天理よろづ相談所病院両方の倫理委員会承認となった。しかしながら患者のリクルートは平成27年度に持ち越されている。 以上から、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に得られた結果を基にして、主に次のことを実施する方策である。 (1)基礎研究について すでに、クルクミンやG-CSFの心筋オートファジー惹起による心筋保護効果については一定の結果を得て2本の論文掲載となったが、それらの仕事の中で、特に心筋エネルギー代謝とオートファジーとの関係が心不全の進展に重要な役割を果たしていることが分かった。そこで今後は、in vivo、in vitro両方の実験系を用いて、主に心筋エネルギー代謝実験に軸足を置いて研究を進める方策である。 (2)臨床研究について 天理医療大学および天理よろづ相談所病院において倫理員会の承認を得、すでに10名から成る臨床研究グループを構築している。そこで今後は、この臨床グループを有効に動かし、患者のリクルート、観察型研究の実施、さらに研究成果の解析、と研究を進める方策である。
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次年度使用額が生じた理由 |
がん化学療法で用いられる既存の薬剤が抗がん剤による心筋障害にどのように影響するかを調べる基礎実験について、申請者らのこれまでの研究成果を基に研究を進めたところ、当初の予定よりも早く年度前半には一定の結果を得ることができた。このため、年度後半はむしろ国内外の研究者らとの議論や論文作成にかかる業務を必要とし、結果的に実支出額を抑えることができた。なお、これらの研究の成果は、年度内に論文掲載となった(J Clin Exp Cardiolog 2015、Biochem Biophys Res Commun. 2015)。
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次年度使用額の使用計画 |
クルクミンやG-CSFの心筋オートファジー惹起による心筋保護効果については一定の結果を得て2本の論文掲載となったが、それらの仕事の中で、特に心筋エネルギー代謝とオートファジーとの関係が心不全の進展に重要な役割を果たしていることが分かった。そこで今後は、in vivo、in vitro両方の実験系を用いて、主に心筋エネルギー代謝実験に軸足を置いて研究を進める。これらの研究は、新たな実験系を要するため、当初の予定よりも物品費を多く必要とする。そこでここに次年度使用予定額を充当する。臨床研究等そのほかの研究計画は、当初の予定通り施行する。
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