研究課題
マグネシウムイオン(Mg2+)は生体機能の調節と維持に必須の二価カチオンである。細胞内Mg2+濃度は多様なMg2+輸送体によって厳密に制御されており、Mg2+輸送体の機能異常は様々な疾病につながると考えられる。SLC41輸送体はMg2+輸送体の一つであり、Mg2+流入やNa+依存性Mg2+排出に関わる可能性が示唆されているが、その生理学的役割や病態学的意義については未だ明確になっていない。本研究の目的は、独自に作製したSLC41A1/SLC41A2ホモ欠損マウスを用い、SLC41輸送体の生体Mg2+制御における機能的役割を解析するとともに、各種病態モデル実験により、その病態生理学的意義を解明することである。作製したSLC41A1/SLC41A2ホモ欠損マウスでは、マグネシウム摂取量依存性の血中Mg2+濃度の変動が野生型マウスと明らかに異なっていた。また、SLC41A2ホモ欠損マウスでは血管反応性の低下および腎機能の低下が認められた。本年度は、腎臓疾患との関係を調べる目的で、SLC41A1/SLC41A2ホモ欠損マウスを用いて、アドリアマイシンおよびシスプラチン誘発腎障害モデルを作製したところ、SLC41A2ホモ欠損マウスにおいてアドリアマイシン誘発腎障害(アルブミン尿、腎糸球体変性)が顕著に増悪することを見出した。なお、SLC41A2ホモ欠損マウスのシスプラチン誘発腎障害およびSLC41A1ホモ欠損マウスの両薬剤誘発腎障害は野生型マウスの各腎障害とほぼ同程度であった。これらの結果より、SLC41A2は腎機能の調節ならびに腎糸球体障害の発症に関わる重要なMg2+輸送体であることが示唆された。
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