研究課題
発生における表現型解析は、着床後の表現型解析を中心に行った。正常マウスと比較してCL-K1遺伝子ノックアウトマウス(CL-K1 KOマウス)において、口蓋裂などが観察されたが成長遅延による器官形成の遅れであり、出生時には正常な状態である場合がほとんどであり、有意な差異は見られなかった。出生時におけるCL-K1 KOマウスの低体重や低い出生率の原因究明には至らなかった。しかしながら、出生後の個体に関しては、骨染色や小動物実験用X線CT装置による解析で、ヒト3MC症候群の症例報告にある二分脊椎症の表現型などいくつかの骨形成不全を見出すことができた。CL-K1遺伝子欠損によるこのような表現型の発生機序を明らかにするためのwt-CL-K1-GFP TGマウスの作成は計画より遅れて進めたが、他の検討に時間を要し、今年度も作出に至らなかった。CL-K1と共に3MC症候群を引き起こす因子として報告のあるMASP-1 の関与についての検討は、抗CL-K1 抗体を用いた免疫沈降によりMASP-1 の共沈について検討を進め、CL-K1とMASP-1が血液中で複合体を形成していることを明らかにし、さらに他の蛋白質も共沈することも確認し、その分子の特定を進めている。これら関連因子を同定することで生体における、特に発生段階におけるCL-K1の役割解明につながると考え、検討を行っている。また、CL-K1 とサイログロブリンの相互作用と甲状腺機能へ及ぼす影響についての検討するため、マウスの甲状腺の組織標本を作製して、CL-K1 とサイログロブリンの免疫染色を行った。その結果、抗CL-K1 抗体及び抗サイログロブリン抗体により局在を明らかにすることができ、さらに両タンパク質を用いた結合実験により両者の結合を確認することができた。
3: やや遅れている
出生後のCL-K1 KOマウスを用いた表現型解析において、多様な表現型が明らかになったことから、解析にかなりの時間を要してしまった。正常マウスとノックアウトマウスの比較で検討を行うため、繁殖の作業に時間を要してしまったこともその要因である。前年から取り組んでいるwt-CL-K1-GFPトランスジェニックマウスの作成については、今年度も作出に至ることができず、当初の予定より遅れている。
発生におけるCL-K1の機能解析とそのメカニズムの解明については、これまでの表現型解析では出生時におけるCL-K1 KOマウスの低体重や低い出生率の原因となる表現型が見出せなかったことから、当初の計画通り、wt-CL-K1-GFPトランスジェニックマウスを作成し、その発現部位から類推する必要性があると考えている。その為にも、トランスジェニックマウスの作成が急務であると考えている。成体においては、CL-K1 KOマウスの解析で、ヒト3MC症候群と同様の表現型が観察できたので、その機序について関連因子の探索などにより追及していきたいと考えている。また、ヒトで同じ発生異常を示すことが報告されているMASP-1との結合もすでに確認できていることから、CL-K1、MASP-1の両方の動態解析からの検討も進めていく予定である。CL-K1とサイログロブリンの組織における共局在や分子間の結合を明らかにできているので、予定通りCL-K1 KOマウスと正常マウスを用いて甲状腺機能の比較を行い、CL-K1の甲状腺機能へのかかわりを明らかにしていく。
計画通り使用したが、端数として少額の次年度繰越金が発生した。
次年度の物品費として使用する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
PLoS One
巻: 10 ページ: -
10.1371/journal.pone.0132692
BMC Biol
巻: 13 ページ: -
10.1186/s12915-015-0136-2