最終年度は、CL-K1の新たな機能として見出した形態形成に係る機能を発生段階における発現の局在から追求する予定であった。そのためwt-CL-K1-GFPトランスジェニックマウスの作成を試みたが、作出が困難であったことから、発生段階におけるCL-K1の発現を免疫組織学的手法により、詳細に解析を行い、表現型解析で正常マウスとノックアウト(KO)マウスで差異が見られた箇所に着目して、発生における機能を類推した。その結果、表現型で差異の見られる箇所で、正常マウスにおいてはCL-K1タンパク質の存在が証明され、形態形成に関与することを示すことができた。 これまでの研究からコレクチンCL-K1は、全身の臓器で発現する分泌型タンパク質であり、既存のコレクチン同様自然免疫機能を有することを明らかにしたが、全く異なる発生や成長、発育にCL-K1が関与する可能性が窺われたのでその役割とメカニズムの解明を目指した。これまでに昆虫モデルで証明された「生体防御蛋白の二重機能性」を動物モデルでコレクチンCL-K1が担うことを証明することを目指した。 発生における表現型解析では、正常マウスとKOマウスの比較で着床後においていくつか異なる表現型を見出した。また、成体における表現型解析は、ノックアウトマウスを用いた各組織標本のHE染色においてノックアウトマウスで異常があることを明らかにした。さらにX線CT装置により骨形成の異常を見出し、血液学的解析や尿検査により腎機能に異常があることを明らにすることができた。 以上の取り組みから、生体防御タンパク質であるCL-K1には、全く異なる発生における形態形成という役割を担う二重機能性を有した因子であることを証明することができた。
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