研究課題
転写因子Nrf2はストレス刺激に応答して誘導的に生体防御遺伝子群を活性化する。Nrf2の抑制因子Keap1の欠失マウスでは恒常的Nrf2活性化により様々な生体防御遺伝子群を活性化するが、同時に食道扁平上皮過角化による摂餌障害のため致死になる。このことは、恒常的Nrf2活性化は生体防御能亢進だけでなく細胞運命決定にも大きな影響を与えることを示唆する。しかし、Keap1欠失マウスは生後間もなく死に至るため食道以外の他組織における解析が進まなかった。そこで本研究では、扁平上皮特異的Nrf2欠失によってKeap1全身欠失マウスの致死性を回避し、扁平上皮以外の組織においてNrf2活性化が及ぼす影響を明らかし、Nrf2による新たな生理機能発見を目指す。平成26年度は全身Keap1欠失マウスの致死性を回避するため、全身Keap1欠失かつ扁平上皮特異的Nrf2欠失マウスの作製に成功した。このマウスは、食道の過角化が改善され、成獣まで生存可能になることがわかった。しかし、食道の表現型が改善されたにも関わらず、顕著な発育不全が観察され、著しく生存率が悪いことがわかった。さらに、この食道以外全身Nrf2活性化マウスの尿は浸透圧の低く量が著しく増加することから水再吸収能が低下していることが考えられた。さらに、このマウスの腎臓は髄質部分が退縮し腎構造が失われていることがわかった。今後、遺伝子発現解析や血液生化学などの解析により、腎臓の表現型の原因を探る。また、腎尿細管特異的Keap1欠失マウスを作製し、食道以外全身Nrf2活性化マウスの腎臓の表現型が再現されるか検討する。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、食道以外全身Nrf2欠失マウスの作製に成功し、期待通り生存可能なマウスになることを明らかにすることができた。また、恒常的Nrf2活性化による新規表現型を見出すことにも成功した。
これまでの解析から、恒常的Nrf2活性化による新規表現型として腎臓の表現型を見出すことに成功した。今後、Nrf2活性化がなぜ腎臓の表現型が現れるのか明らかにするために、遺伝子発現解析や血液生化学の解析を行う。
H26年度に遺伝子発現解析を行う予定だったが、十分な解析を行うことができなかったため、この遺伝子発現解析に必要な試薬等の費用は次年度に行うことにしたため。
遺伝子発現解析を行うために必要な試薬等を購入予定である。
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