研究課題
平成26年度に全身Keap1欠失かつ扁平上皮特異的Nrf2欠失マウスの作製し、その致死性を回避することに成功した。このマウスをNEKOマウスと名付けた。平成27年度はNrf2活性化が及ぼす影響を明らかにすることを目的に、NEKOマウスの表現型解析を進めた。その結果、NEKOマウスは多尿を呈し、尿浸透圧が低いことから、NEKOマウスは尿の水再吸収が低下した病態(尿崩症)を呈することがわかった。その結果、腎盂に圧がかかり腎臓は水腎症のような構造変化を起こした。視床下部で産生される水再吸収制御ホルモンのバソプレッシンの血中濃度はNEKOマウスにおいて有意な変化はなかったことから、中枢性の尿崩症ではないと考えられた。一方、腎臓の集合管において水再吸収を担うAQP2チャネルのタンパク質レベルの発現低下がNEKOマウスにおいて観察されたことから、腎性の尿崩症であると考えられた。さらに、ドキソサイクリン誘導的な腎尿細管特異的Keap1欠失マウスを作製し、成獣期にドキソサイクリン投与を行ったところ尿崩症は呈さなかったが、胎児期からドキソサイクリンを投与したところ尿崩症を呈した。以上の結果より、Nrf2活性化による尿崩症の発症には、胎児期の腎尿細管においてNrf2が活性化する必要があることがわかった。Nrf2活性化は抗酸化や異物代謝の反応を促進することから、腎臓を含めて様々な臓器を標的にNrf2活性化剤の開発が進んでいるが、以上の研究成果は、Nrf2活性化剤の投与時期について注意が必要であることを示唆するものである。平成28年度はさらなるメカニズム解明に挑み、論文発表を目指す。
2: おおむね順調に進展している
初年度に作製にしたマウスの表現型解析が進み、腎性の尿崩症を呈すること、および幼若期の腎臓においてNrf2が活性化することが尿崩症を呈するのに必要であることを突き止めることができた。
これまでの解析から腎臓の発生期にNrf2が活性化すると尿崩症を呈することがわかったが、その発症機序は未だ不明である。今後はこのメカニズム解明を目指し、論文に発表することを目指す。また、NEKOマウスの腎臓以外の表現型解析をさらに進める。
平成27年度にNEKOマウスの腎臓以外の組織の解析も進める予定だったが、十分な解析を行うことができなかったため、必要な試薬等の費用は次年度に行うことにしたため。
NEKOマウスの腎臓以外の組織の表現型解析を行うために必要な試薬等を購入予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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