研究課題
転写因子Nrf2はストレス刺激に応答して誘導的に生体防御遺伝子群を活性化する。Nrf2の抑制因子Keap1の欠失マウスでは恒常的Nrf2活性化により様々な生体防御遺伝子群を活性化するが、同時に食道扁平上皮過角化による摂餌障害のため致死になる。しかし、Keap1欠失マウスは生後間もなく死に至るため食道以外の他組織における解析が進まなかった。そこで本研究では、扁平上皮特異的Nrf2欠失によってKeap1全身欠失マウスの致死性を回避し、扁平上皮以外の組織においてNrf2活性化が及ぼす影響を明らかし、Nrf2による新たな生理機能発見を目指した。このKeap1全身欠失かつ扁平上皮特異的Nrf2欠失マウスをNEKOマウスと名付け、表現型解析を行なった結果、NEKOマウスは低張多尿で、バソプレシン不応答であったことから、腎性尿崩症を呈することがわかった。この尿崩症を呈する原因として、水再吸収に重要なAQP2チャネルタンパク質の顕著な低下が観察された。また、腎尿細管特異的かつ誘導的にKeap1欠失を作成して調べたところ、胎児期からKeap1を欠失させた場合に、NEKOマウスと同様に腎性尿崩症を呈することがわかった。このことから、腎臓の発生時期からの過剰なNrf2活性化は腎性尿崩症を呈することが明らかになった。この成果をNature Communication誌に発表した。以上の研究成果は、胎児期・乳児期に環境汚染物質などの暴露によって過剰にNrf2が活性化した際に腎性尿崩症を発症する可能性を示唆しており、新しい腎性尿崩症の発症メカニズムを提案するものである。すなわち、これまで腎性尿崩症の原因として先天的なバソプレシン受容体やAQP2の変異が知られているが、後天的な環境刺激によっても腎性尿崩症を発症することが明らかになった。
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