研究課題
これまでの研究から臓器サイズの制御にはHippo pathwayが重要な役割をしていることが明らかとなってきた。一方で、Hippo pathwayの哺乳類のホモローグであるLats2、YAP、WW-45のノックアウトマウスはいずれも胎生致死となり、生理的条件下における臓器サイズの決定への影響に関しては明らかになっていない。これまで臓器欠損マウスの胚盤胞にラットの多能性幹細胞を注入しキメラ動物を作出する異種胚盤胞補完法で、マウスの体内にラットの膵臓、胸腺を再生することに成功している。 この手法を応用することで、サイズの違う異種の臓器が異種の体内のなかでどのようサイズになるかを確認することができる。 つまり、マウスの体内にできたラットの臓器、ラットの体内にできたマウスの臓器はどのようなサイズになるのかを調べることが出来る。さらに、注入する多能性幹細胞においてHippo pathwayの分子を欠損させておけば、胎生致死になることなく、その分子の臓器サイズ決定における役割も調べることができる。 以上の理由から、本研究では異種胚盤胞補完法を応用し、Hippo pathway分子の臓器サイズ決定における役割を解明することを目的とする。 これまでにTALENを用いて膵臓形成に必要なPdx1を欠損させたラットを作出することに成功した。ホモ欠損ラットでは完全に膵臓が欠損していることが確認できた。 また、Lats2、YAP、WW-45を欠損させたマウスES細胞を作製することにも成功した。今後、Pdx1欠損ラットの胚盤胞にマウス遺伝子改変ES細胞を注入し、欠損遺伝子の臓器サイズ制御における役割を検討する。この研究の基盤となる研究材料の作製に成功したことは本研究達成の為の大きな前進であると考える。
2: おおむね順調に進展している
当該年度の目標は1、膵臓欠損ラットの作成、2、異種胚盤胞補完法による膵臓の再生および再生膵臓のサイズの確認、3、再生膵臓におけるHippo pathway分子の挙動の解析である。1、2はおおむね結果が出ている。加えて27年度以降に遂行予定のHippo pathway分子欠損ES細胞の作製が終了しており、全体としておおむね順調に進展している。
今後は当該年度に実施予定であった計画である、発生段階の膵臓におけるHippo pathway分子の挙動の解析を行うのと同時にHippo pathway遺伝子欠損ES細胞を利用した異種胚盤胞補完法により、生理的条件下で臓器サイズ制御にHippo pathway遺伝子がどのように影響を与えているかを解析して行く。
当該年度は次年度の研究計画の一部であるin vitroの実験を優先的に進めた結果、次年度使用額が生じた。
次年度使用額はマウス、ラットを使用したin vivoの実験を主に行う。従って、マウス、ラット購入費、飼育費。また、動物組織の免疫染色に用いる抗体などの物品費および、これまでの成果を報告するための旅費に使用する。
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