研究課題
発生の過程で細胞は活発な増殖、分化、細胞死を繰り返し、個体、臓器を形作っていく。成体になると、それまでの活発な細胞増殖は抑えられ、組織が障害されたとき、組織のターンオーバーのときに、組織特異的前駆細胞がそれを補正する為に、分化、増殖を行う。 一方で、このメカニズムが崩壊し、異常な細胞分裂が起こると腫瘍が発生してしまう。 これらの生命現象における細胞分裂、分化、アポトーシスなどの個々の現象の詳細は非常に良く研究されているが、それらの現象がどのように連携し個体や臓器のサイズの決定をしているかは、今だ不明な点が多い。我々はこれまで臓器欠損マウスの胚盤胞にラットの多能性幹細胞を注入しキメラ動物を作出する異種胚盤胞補完法で、マウスの体内にラットの膵臓、胸腺を再生することに成功している。 この手法を応用することで、サイズの違う異種の臓器が異種の体内のなかでどのようサイズになるかを確認することができる。 つまり、マウスの体内にできたラットの臓器、ラットの体内にできたマウスの臓器はどのようなサイズになるのかを調べることが出来る。昨年度までに作製に成功した膵臓欠損ラットの胚盤胞にマウスの多能性幹細胞を注入し、再生された膵臓のサイズを計測したところ、ラット体内に再生されたマウスの膵臓はラットの膵臓と同等のサイズであることが分かった。従って、膵臓のサイズ決定は内在性ではなく、外来刺激によるものであることが強く示唆された。
2: おおむね順調に進展している
昨年度までに膵臓欠損ラットを作製することに成功し、本年度は臓器サイズの小さいマウスの多能性幹細胞からラット体内に膵臓を作製することに成功した。ここまでの作業は非常に難易度の高い作業であるが、予定通りに進んでいる。また、このような異種キメラを用いた臓器サイズ制御機構の解明は世界初であり、外来刺激による臓器サイズ制御が生理的条件下で観察されたことは非常に重要な知見である。
今後はどのようなシグナル経路で臓器サイズが決定されているかの分子メカニズム解明に取り組む。Hippoシグナルを中心に、生理的条件下でどのようなシグナル変化が起きているかを詳細に解析する。
本年度の研究結果より、次年度、新たにタンパク質発現解析を行うことが必要となった為、次年度使用額が生じた。
たんぱく質発現解析、サイトカインアレイを行う予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 7件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件)
Molecular Reproduction and Development
巻: Epub ahead of print ページ: in press
10.1002/mrd.22644.
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 469(4) ページ: 1062-8
10.1016/j.bbrc.2015.12.105.
Mol Ther Methods Clin Dev.
巻: 2 ページ: 15046
10.1038/mtm.2015.46.
Hepatol Res.
巻: Nov 19. ページ: in press
10.1111/hepr.12622.
Stem Cell Reports.
巻: 5(4) ページ: 597-608
10.1016/j.stemcr.2015.07.011
Development.
巻: 142(18) ページ: 3222-30
10.1242/dev.124016.
Dev Biol.
巻: 407(2) ページ: 331-43
10.1016/j.ydbio.2015.07.004