研究課題
Ras association domain family(RASSF)蛋白質は腫瘍抑制分子と作用を共にすることが知られており、その発現抑制がヒト癌で高頻度に認められている。私たちはその中でもRASSF3とRASSF6に着目して研究を行っているが、特に、RASSF6は多種多様な分子と相互作用をすること、さまざまな生物学的事象に関与すること、などが分かってきた。本研究では、私たちの研究により同定されたRASSF6の相互作用分子UNC119A蛋白質について解析を行った。これまでにRASSF6が腫瘍抑制分子として有名なp53を制御することを報告しているが、UNC119AもまたRASSF6を介してp53の制御に関与することが明らかになった。低分子G蛋白質であるK-RASの変異はがん原遺伝子になることが知られているが、その発現はただちにがん化を促すことにはならず、細胞を前がん状態に止める。正常細胞の多くは前がん状態を察知し、自らを細胞死や不可逆的な分裂停止状態にすることがある。これはがん化を防ぐフェイルセーフ機構と考えられており、ユビキチンリガーゼMDM2の機能抑制によるp53の増加はその素課程である。一方、私たちはRASSF6とMDM2が相互作用することでp53を安定化させることを見出していた。本研究では、RASSF6とMDM2との相互作用様式について詳細な解析を行った。その結果、以下のことが判明した。1)定常状態にあるRASSF6の分子内相互作用にはMDM2との分子間相互作用を弱める効果がある、2)K-RASがRASSF6に作用すると、MDM2への親和性を高める構造に変換させる、3)このことがMDM2の機能抑制からのp53の増加へと導く。以上は新たな素課程を明らかにするものであり、フェイルセーフ機構の全容解明の一助となることが期待される。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
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