研究課題
本研究は、iPS細胞作成過程をモデル系として用いて、細胞がリプログラミングされるのに重要な反応であるDNA脱メチル化に関与すると考えられているAID等シチジンデアミナーゼや、TETファミリータンパク質の役割を解析しすることを目的とする。iPSの樹立時のシチジンデアミナーゼの積極的な関与は認められなかったため、長期培養時におけるiPS形質の安定的な維持での役割についてさらに検討した。AID遺伝子の発現を単細胞レベルでモニターできるMEFから作成した17個のiPS細胞株について、iPS誘導後から60日間長期培養し、AID発現を示すRFP陽性細胞の出現や、AIDのmRNAの発現上昇について検討したが、いずれも認められなかった。iPS作成時に長期培養した際にAIDが発現する事が報告されているが、それらと矛盾する結果となった。次に、AID遺伝子であるAicdaのプロモーター領域のエピジェネティックな変化を調べるため、iPS細胞株、MEF、ナイーブなBリンパ球、胚中心Bリンパ球から調整したDNAを用いてBisulfite処理を行い、Aicdaプロモーター領域のDNAメチル化の程度を解析した。MEFにおいては55%のCpG部位がメチル化されており、それはナイーブなBリンパ球でも同程度の58%であった。AIDが高発現する胚中心Bリンパ球ではメチル化の割合は低下していたが44%程度であった。それに対して、2系統のiPS細胞におけるメチル化率は、3%および17%であり、胚中心Bリンパ球に比べても顕著に低いことが明らかになった。Oct4プロモーター領域では、メチル化率はMEF79%、iPS細胞11%-14%であり矛盾ない。AIDプロモーター領域はiPS化に伴うゲノム脱メチル化に沿って低メチル化状態になるが、AIDの高発現にはつながっていないことが示された。細胞のiPS化時のAID発現の違いは、実験系により転写因子のavailabilityの差に起因している可能性が考えられた。
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Cancer Sci
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1111/cas.13244
J Biol Chem
巻: 291 ページ: 25227-25238
10.1074/jbc.M116.759571