研究課題
本研究ではチオレドキシンファミリーに属する分子nucleoredoxin(NRX)について、グルコース代謝経路との関連や、個体レベルでの役割を明らかにすることを目的としてきた。これまでの3年間の研究から分子、細胞レベルでの機能が明らかとなってきたので、本年度は特にNRXの遺伝子欠損マウスを用いてがんとの関わりを追究した。NRXホモ欠損マウスは胎生致死であることをすでに見出している。そこでNRXのヘテロ欠損マウスや、NRXヘテロ欠損マウスとp53欠損マウスを掛け合わせて作出した、二重欠損マウスを用いて各系統の経過を観察した。その結果、NRXヘテロ欠損マウスでは野生型マウスと比べてやや生存期間が延長していることを発見した。一方、p53ヘテロ欠損マウスとNRX、p53両ヘテロ欠損マウスとの間には明確な生存期間の差異は認められなかった。つまり、NRXとp53との間に何らかのクロストークのある可能性が示唆された。これまでの細胞レベルでの解析結果よりNRXがグルコース代謝経路と関わっていることが判明しており、またp53も様々な分子を介してグルコース代謝経路を制御していることが知られている。本研究結果より、両者が協調してグルコース代謝経路を調節している可能性が考えられ、今後より詳細な解析を行うことで、それを明らかにしてゆきたいと考えている。また各系統のマウスの解剖し、腫瘍の有無やその部位、悪性度などを細かく解析してゆくことで、NRXとp53のクロストークのがんにおける重要性を追究してゆく予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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