研究課題
本研究ではWntファミリーの翻訳後修飾と細胞外分泌制御を明らかにすると共にWntとその受容体の細胞内トラフィックによる細胞機能の制御機構を明らかにすることを目的としている。今年度はWnt1とWnt5bに付加される糖鎖構造を明らかにした。また、Wnt5bがエクソソームと呼ばれる細胞外小胞と共に分泌され、大腸癌細胞株のCaco2細胞が分泌するWnt5b含有エクソソームには癌細胞の増殖と運動能を亢進させる機能があることを見出した。さらに、極性化されたMDCK細胞においてWnt1は頂端部、側底部の両者に分泌され、エクソシストを介して頂端側、クラスリンやAP1を介して側底側へ輸送されることを明らかにした。Wntシグナル経路の受容体として機能するLRP6がLDL依存性のLDL受容体のエンドサイトーシスに必要であることから、LRP6が脂質代謝に重要な機能を果たしていることが示唆されている。私共はヒト肝癌細胞株の HepG2 細胞において LRP6 が頂端膜に局在することを見出し、その輸送経路を解析した。その結果、LDLの非存在下においてLRP6はゴルジ体から一度、側底膜に移行した後、脂質ラフトに局在するflotillin依存性に頂端膜に再輸送(トランスサイトーシス)されることを見出した。さらに、NPC1の構造に類似し、コレステロール代謝に関連するNPC1L1がLRP6と頂端膜において共局在することを見出した。一方、LDL刺激によってLRP6はクラスリン依存性エンドサイトーシスによって細胞質内に移行した後、後期エンドソームへ輸送される。これらの結果から、肝細胞においてLRP6はLDLの有無によってエンドサイトーシス経路が制御され、脂質代謝が制御されることが示唆された。本研究成果を3編の原著論文として投稿し、Wnt5bに関する論文はCancer Sci.に掲載された。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Cancer Sci.
巻: 108 ページ: 42-52
10.1111/cas.13109
eLife
巻: 5 ページ: e11621
10.7554/eLife.11621
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molbiobc/