研究課題/領域番号 |
26460366
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上田 裕紀 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 招へい研究員 (90543463)
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研究分担者 |
宮崎 早月 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60452439)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖尿病 / インスリン / 転写因子 |
研究実績の概要 |
新生児一過性糖尿病の最小重要原因領域内に唯一存在する蛋白質をコードするインプリンティング遺伝子ZAC1 (Zinc finger protein which regulates Apoptosis and Cell cycle arrest1) (=Pleiomorphic adenoma gene-like 1(PLAGL1))を、Cre-loxPシステムを用いて組織・細胞特異的に本遺伝子を欠損させることができるZac1-floxマウス作製に着手し、Zac1-floxマウスの作製を完了していた(B6-Zac1 flox/flox)。そこで、生体内膵β細胞において本遺伝子を特異的に欠損させ、膵β細胞の分化・機能維持における役割を解析する目的で、この雄性B6-Zac1 flox/floxマウスと雌性Rat insulin promoter(RIP)-CreER Tgマウスと交配し、RIP-CreER-Zac1 flox/wtマウスを作製した。Zac1は、父親由来のアリルしか発現しないインプリンティング遺伝子であり、また、RIP-CreER Tgマウスは、タモキシフェンによりCreが活性されることから、タモキシフェン投与後の本マウスにおいて生体内膵β細胞で特異的にZAC1が欠損していると考えられる。本マウスとタモキシフェン非投与マウスにブドウ糖負荷試験を施行したところ、耐糖能やインスリン分泌能に有意な差は認められなかった。また、体重や成長などにも有意な差は認められなかった。一方で、B6-Zac1 flox/floxマウスをさらにIT6 Tgマウス(膵ベータ細胞特異的にSV40 T抗原を発現し、インスリノーマを発症)と交配することにより、Zac1(flox/flox)-IT6マウスを得た。このマウスでは、Zac1の両アレルがfloxとなり、かつインスリノーマを発症する。Zac1(flox/flox)-IT6マウス(雄雌2匹)に発生したインスリノーマからベータ細胞株(MIN6-Zac1 flox/flox)を計21株樹立した。このうち良好なグルコース刺激に対するインスリン分泌能を示した4株にCre発現アデノウイルスベクターを感染させ、Zac1欠失細胞(MIN6-Zac1KO)を得た。定量的RT-PCRにより、Zac1発現がほぼ失われていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の目標であった、マウスの交配計画はおおむね順調に進んでいる。IT6 Tgマウスの交配に関しては、予定より早く進み、Zac1欠失細胞(MIN6-Zac1KO)の樹立に成功している。ただ、残念ながら、予想に反して、RIP-CreER-Zac1 flox/wtマウスにおいて、タモキシフェン投与群(生体内膵β細胞特異的ZAC1欠損マウス)と非投与群(生体内膵β細胞特異的ZAC1非欠損マウス)の間に、耐糖能などのマウスの形質に有意な差が認められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)Zac1は父親由来のアリルしか発現しないインプリンティング遺伝子ではあるが、念のためにZAC1をホモで欠損するRIP-CreER-Zac1 flox/ floxを作製し、耐糖能関連形質を解析する。 2)平成26年度に樹立したZac1欠失膵β培養細胞株(MIN6-Zac1KO)の形質や分子・細胞生物学的解析を施行する。 3)我々のこれまでの解析から、Zac1はCD4+Tリンパ球において自己免疫性(1型)糖尿病疾患感受性遺伝子IL2の発現を低下させることを報告している(Hisanaga-Oishi et al, Endocrine J 2014)。一方で、1型糖尿病と2型糖尿病には共通素因が存在することが知られており、B6-Zac1 flox/floxマウスと既に購入済みのCD4-Cre Tgマウスとを交配し、生体内CD4陽性Tリンパ球で特異的にZac1を欠損するマウスの耐糖能関連形質の解析も進めていきたいと考えている。CD4陽性Tリンパ球でのZac1の役割を解明し、膵β培養細胞におけるZac1の役割を比較することにより、Zac1の膵β培養細胞における特有な役割や共通した役割などが解明できると期待される。
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