研究実績の概要 |
新生児一過性糖尿病の最小重要原因領域内に唯一存在する蛋白質をコードするインプリンティング遺伝子ZAC1 (=PLAGL1)を、Cre-loxPシステムを用いて、膵β細胞において本遺伝子を特異的に欠損させ、膵β細胞の分化・機能維持における役割を解析する目的で、MIN6-Zac1-flox細胞株とZAC1を欠損したMIN6-Zac1-KO細胞株の樹立し解析した。MIN6-Zac1-flox細胞株とMIN6-Zac1-KO細胞株との間で、グルコース応答性インスリン分泌やインスリン含量に差はなかった。また、増殖やアポトーシスにも差がなかった。MIN6-Zac1-flox細胞株とMIN6-Zac1-KO細胞株との間でDNAマイクロアレイ(アフィメトリクス)で発現量に差が認められた遺伝子の発現量をReal-time PCRでの確認したところ、Egr1, Shh, cFos, Sst遺伝子の発現量に差があることが確認できた。従って、Zac1は、成熟β細胞においてKOされても、β細胞の機能に大きく影響しないことが示唆された。いくつかの遺伝子において、発現の変化が認められ、Zac1により直接制御を受けている可能性が示唆された。
一方で、平成27年度に樹立したCD4-Cre-Zac1 flox/floxマウスを1年以上の高週齢まで観察や解析を施行したが、1型糖尿病の発症は認められなかった。また、慢性関節リュウマチや円形脱毛症などの自己免疫疾患様の症状も認められなかった。フローサイトメータを用いてCD4陽性Tリンパ球分画分画をCD4-Zac1-flox細胞とCD4-Zac1-KO細胞で解析し比較検討したが、差が認められなかった。しかしながら、β細胞の場合とは異なり両CD4陽性Tリンパ球の増殖能・生存率には差が認められ、細胞機能への影響に細胞間格差が存在すること可能性が示唆された。
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