研究課題/領域番号 |
26460367
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田代 文 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40136213)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 始原生殖細胞 / エピジェネティック制御 / ヒストン / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
本研究では、始原生殖細胞のエピジェネティック制御におけるCes1の機能を明らかにすることを目的としており、平成26年度は下記の研究を行った。 ① Ces1 KOマウスにおける始原生殖細胞の数を胎生期の11.5日以降の発生ステージでカウントしたところ、野生型マウスに比し、大きく減少していることを確認した。② Ces1 KOマウスの始原生殖細胞における特異的なマーカー蛋白の発現を免疫染色し、発現を調べたところ、MVH, Nanog, c-Kitなどの発現が野生型マウスに比し、明らかに低いことが判明した。③ Ces1 KOマウスの始原生殖細胞におけるヒストンのメチル化とDNAの脱メチル化の免疫組織学的な解析:E7.5からE12.5のCes1 KOマウスの始原生殖細胞のヒストンの修飾については、H3K9me2、H3K9me3、H3K27me3等を、DNAのメチル化については、5-メチルシトシンと5-ヒドロキシメチルシトシンの特異的な抗体により免疫組織化学し、染色像および相対シグナル強度をコントロール群と比較した。その結果、これらの修飾がKOマウスの始原生殖細胞で野生型マウスより全体的に高く維持されていることが判明した。④ Ces1と直接、相互作用を示すヒストンメチル基転移酵素の探索: SUV39H1/2等のヒストンメチル基転移酵素とCes1の直接的な関係を検討するため、培養細胞で過剰発現させ、免疫共沈降により両者の結合を検討し、SUV39H1/2とCES1が結合するという結果が得られた。 以上の解析より、始原生殖細胞におけるヒストンメチル化とDNAのメチル化を介したエピジェネティックな制御にCes1が関与していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度に予定していた研究がほぼ終了し、始原生殖細胞におけるヒストンメチル化とDNAのメチル化を介したエピジェネティックな制御にCes1が関与していることを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、Ces1ノックアウトによる遺伝子発現やヒストン修飾への影響を詳しく検討する。 ① Ces1 KOによりエピジェネティックリプログラミングに異常をきたし、発現が変化する遺伝子の特定:Ces1 KOマウスの始原生殖細胞における遺伝子発現パターンを、次世代シーケンサーを用いた網羅的な解析により検討する。② Ces1 KOの始原生殖細胞において、H3K9me2により転写活性が抑制されている遺伝子の解析:H3K9me2は転写活性を抑制するヒストンの修飾であるが、①の解析で、Ces1 KOにより発現が低下している遺伝子の中で、始原生殖細胞の発生・分化に重要な遺伝子について、H3K9me2による転写活性の抑制がみられるかどうかを、H3K9me2に対する特異的な抗体を用いて、ChIP(chromatin immunoprecipitation)-PCRにより確認する。 これまでの解析に基づく始原生殖細胞のエピジェネティック制御(ヒストンメチル化とDNAのメチル化)へのCes1の関与について、さらにその機序の解析を進める予定である。
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