当該年度の研究成果① ミトコンドリア内c-Srcの活性制御機構解析:ミトコンドリア内にFLAG-c-Srcを発現するRPE細胞より抗FLAG抗体を用いてc-Src複合体を回収し、既報に則り、c-Src複合体から調製したペプチドをMS/MS解析した。同様に、チタンカラムにより濃縮したリン酸化ペプチドについても解析した。その結果、ミトコンドリア内においては、c-Srcは細胞質とは全く異なる分子機構で活性が維持されていることが判明した。また、各種病態モデル動物の肝臓ミトコンドリアにおいては、c-Src複合体の構成成分が正常の場合と大きく異なることが明らかになった。現在、ミトコンドリア内c-Src活性を制御する分子基盤についてさらに詳しい解析を行っており、ミトコンドリア特異的なc-Src活性調節機構を明らかにし、早期に結果を公表したい。研究成果② ミトコンドリア内c-Srcの機能解析―B細胞受容体シグナル伝達系の解析:c-Srcリン酸化不可変異体(SDHAY215F)をB細胞特異的に発現させた独自のトランスジェニックマウスの解析を詳細に行った。SDHAY215F 発現オス個体のB細胞が、正常レベルの3倍程度の活性酸素を恒常的に産生していることを確認し、抗体産生能及び各種B細胞表面マーカーの発現解析を行い、B細胞受容体シグナル伝達系が低下していることを見出した。さらに、活性酸素の増加によりB細胞受容体と共役するCD19分子の発現レベルが有意に低下することを明らかにした。メス由来B細胞ではこれらの変化は観察できなかった。これらの成果をEur J Immunol誌に公表した。
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