研究課題/領域番号 |
26460374
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研究機関 | 石川県立看護大学 |
研究代表者 |
多久和 典子 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (70150290)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脂質メディエーター / 慢性炎症 / 臓器線維化 / 細胞老化 |
研究実績の概要 |
脂質メディエーター、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体サブタイプS1P2受容体が慢性炎症・臓器線維化において果たす役割を明らかにするため、ブレオマイシン(BLM)による肺線維化の程度をS1P2受容体欠損(S1P2KO)および同腹野生型(S1P2WT)マウスで比較したところ、S1P2KOマウスで有意に肺線維化が軽減することを見出した。肺組織のフィブロネクチン・コラーゲンのmRNA発現レベルはKOマウスでほぼ半減していた。KO,WTマウス肺組織から線維芽細胞を採取し培養線維芽細胞実験系で検討を加えたところ、細胞増殖能はBLM非存在下ではKOマウスでむしろ高かったが、BLM存在下ではKO・WTともに細胞増殖が完全に抑制された。炎症に関与するサイトカインIL-6の発現レベルはKOで有意に上昇していたが、IL-1βとTGF-βでは差がみられなかった。細胞老化のマーカーであるβガラクトシダーゼの発現はKO由来線維芽細胞で増強しており、細胞周期関連サイクリン依存性キナーゼのインヒビターであるp16INK4aの発現レベルがKOで有意に亢進していた。以上から、KOマウス肺由来線維芽細胞は細胞老化が何らかの原因でWTに比べて促進されており、BLMによる線維化の軽減に関与している可能性が考えられた。一方、細胞外基質蛋白分解酵素の発現レベルを検討したところ、KO由来線維芽細胞において複数種類の細胞外基質蛋白分解酵素の発現が有意に亢進していた。以上から、S1P2KOマウスで線維化が軽減するメカニズムとして、肺線維芽細胞の細胞老化の促進と基質蛋白分解酵素の活性増強が関与している可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は肺組織の線維芽細胞を用いて細胞レベルの検討を行い、臓器線維化に促進的に働くS1P2受容体の作用メカニズムの一端を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
慢性炎症の結果として生じる臓器線維化には、骨髄由来炎症性細胞の関与が考えられる。今後、特にマクロファージに発現するS1P2受容体の役割を明らかにするため、骨髄移植実験を含めた検討を行う。
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