研究課題/領域番号 |
26460377
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
谷口 善仁 杏林大学, 医学部, 教授 (00324616)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | CYP1A1 / P450 / AhR / メタボローム / メダカ |
研究実績の概要 |
CYP1Aは魚類から哺乳類まで保存されている主要な化学物質代謝酵素である。ダイオキシン受容体として知られる芳香族炭化水素受容体(AhR)は多環芳香族炭化水素(PAH)と結合すると核内に移行し、ARNTとヘテロダイマーを形成してCYP1Aなどの解毒代謝酵素群を誘導する。cyp1a遺伝子を破壊したメダカはPAHに対する感受性が亢進し、野生型メダカの数十分の一の濃度のPAHによって心浮腫などの毒性が現れる。一方、cyp1aノックアウトメダカでは化学物質に曝露していない通常飼育環境下においてもAhRシグナルが亢進していることが明らかとなっている。このことは体内に何らかのAhRシグナルを活性化する物質が存在し、cyp1a遺伝子の欠損によってそれが蓄積していることを示唆する。本研究では、メタボローム解析などの手法により内因性AhRリガンドを同定することを目的とする。さらに、新たな代謝物質を同定することにより、生体におけるAhR-CYP1A代謝経路の新たな役割を解明する。
本年度は、以下の成果が得られた。
マイクロアレイ解析では、成人型と胎児型のグロビンが、野生型に比べてノックアウトで2倍以上多く発現していることが明らかとなった。また、シトクロムcオキシダーゼ・サブユニット4の発現もノックアウトにおいて2倍以上に亢進していた。メタボローム解析では、野生型とノックアウトの間で核酸代謝に差が認められた。 AhR/ARNT複合体が結合するXRE (xenobiotic response element)の下流にEGFPを発現するトランスジェニックを5系統得た。どの系統も中脳視蓋正中にある複数の細胞集団と、そこから腹外側へ向かう神経線維に蛍光が認められた。これらの蛍光は受精後2日から見え始め、孵化前になると減弱することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロアレイ解析とメタボローム解析より、ノックアウトに特徴的なプロファイルを抽出することができた。トランスジェニックの脳での発現部位の解析も進展した。
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今後の研究の推進方策 |
得られた知見の生物学的意義に照らして、CYP1Aの新たな機能を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はマイクロアレイとメタボロームで得られたデータの解析に多くの時間を費やしたために未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は得られたデータのバリデーションを行うとともに、生物学的な意義の解析を行う。未使用額はその経費に充てることにしたい。
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