これまでの研究結果から、ABCB10は何らかの他のタンパク質と相互作用することでミトコンドリアストレス情報伝達に関与している可能性が考えられた。そこで、今年度は、ABCB10と相互作用(結合)するタンパク質の同定を試みた。まず、架橋試薬であるDisuccinimidyl suberate(DSS)を用いて、ABCB10に近接しているミトコンドリアタンパク質があるか調べた。具体的には、FLAGタグ付きABCB10(ABCB10-FLAG)を過剰発現しているHeLa細胞からミトコンドリアを単離し、それにDSSを添加してタンパク質の架橋を行い、得られたサンプルを用いてウエスタンブロットを行った。その結果、高分子量化したABCB10-FLAGが検出されたことから、ABCB10-FLAGと近接しているミトコンドリアタンパク質があることがわかった。また、免疫沈降法を用いて、ABCB10-FLAGと直接結合するミトコンドリアタンパク質があるか調べた。具体的には、単離したミトコンドリアのTriton X-100抽出液に、抗FLAG 抗体結合ビーズを添加し、それに結合するタンパク質を回収し、その後、FLAGペプチドを加えることで、結合したタンパク質の溶出を行った。得られたサンプルをSDS-PAGEで展開して銀染色を行ったところ、ABCB10-FLAGや内在性ABCB10であると推定されるバンドだけでなく、それら以外にも異なる分子量のバンドが複数検出された。このことから、ABCB10は、ミトコンドリアにおいて、何らかの他のタンパク質群と結合していることが示唆された。
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