我々は、ヒトで統合失調症を多発する22q11.2欠損症候群のモデルマウスを用いて、22q11.2領域に存在するmiRNA のプロセッサーのDgcr8 が欠損するため、Cxcl12 (Sdf1)/Cxcr4 シグナルの障害が生じ、海馬の歯状回と大脳皮質の介在神経細胞の発生異常につながることを見出してきた。 Dgcr8 の欠損によって前頭葉依存性の作業記憶が障害されることが報告されている。 我々は、中枢神経系のどの部位のどの細胞種でDgcr8が欠損することによって作業記憶の障害が起こるのか検討するため、Cre/loxP を用いたDgcr8過剰発現系を樹立し、Cre を用いて発生段階特異的、細胞腫特異的にDgcr8 を再発現させれば、22q11 欠損症候群モデルマウスが示す神経発生異常、行動異常を補償できるか検討を行った。 具体的には、全身で恒常的に発現されるROSA locus にCre/loxP制御stop codon を伴ったDgcr8 をknockinしたBAC のBAC transgenic mice を樹立し、樹立したBAC transgenic mice を介在神経細胞の前駆細胞にCre を特異的に発現するDlx5/6-Cre transgenic miceや前脳部位神経前駆細胞にCre を特異的に発現するEmx1-Cre transgenic miceと掛け合わせ、介在神経細胞特異的もしくは前脳部位神経前駆細胞特異的にDgcr8 の過剰発現を誘導し、22q11欠損症候群モデルマウスが示す神経発生異常が補償できるか検討を行った。
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