研究課題/領域番号 |
26460385
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松浦 憲 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (10625742)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経科学 |
研究実績の概要 |
SPAL-1(SPA-1-like-1)はシナプス後肥厚(PSD)に局在し、NMDA受容体およびPSD-95などと複合体を形成する、低分子量Gタンパク質Rapに特異的なGAPである。私たちはSPAL-1の生体内の生理機能解明を目指し、SPAL-1ノックアウトマウスを作成、多角的な解析を行ってきた。これまでにSPAL-1の欠損が海馬CA3領域のシナプス可塑性の異常、海馬依存的な学習障害、自閉症様行動、てんかん感受性の増大を引き起こすなど重要なデータが得られている。さらに分子レベ ルの解析でもグルタミン酸トランスポーター発現制御やエンドサイトーシス機構との関係など、重要でオリジナリティの高い予備的データが得られてきているため、本研究ではSPAL-1によるシナプス可塑性制御機構およびヒト精神疾患様表現型の分子機構に焦点を当て、成体マウス脳内のSPAL-1の分子的役割の解明を目的としている。 これまでにSPAL-1の機能を探る上で重要な情報になるSPAL-1結合因子のスクリーニングで、SPAL-1特異的抗体とクロスリンク法を用いたCo-IP MS解析の開発により、脳内生理的結合因子の網羅的解析に成功した。ここで得られた、SPAL-1ノックアウトマウスの表現型と関連する可能性のある因子の複数が、実際脳内でSPAL-1と相互作用している事をウエスタンブロッティングや超解像顕微鏡解析などにより明らかにする事に成功した。またこれら因子の内、てんかん感受性の増大や高次脳機能に関与する事が知られている因子群とSPAL-1との関連が明らかになってきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、SPAL-1が関与する生理機能の分子機構を明らかにし、その異常が学習・行動障害を引き起こすメカニズムを明らかにすることである。平成27年度から導入された超解像顕微鏡を使用した解析から、SPAL-1の細胞内局在や生理的な結合因子スクリーニングで同定された因子との共局在について、これまでには出来なかったレベルでの詳細な解析が可能になり、これまでの理解とは少し異なる状況が明らかとなった。これらの新しいデータを勘案し、メインの解析対象を当初のGLAST およびNa+/K+-ATPアーゼから、GPCRおよびその制御因子に大きく計画を見直したが、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策としては、基本的にはこれまで通り推進していく。SPAL-1欠損によるマウスの表現型に結びつく分子メカニズムの同定を最優先し、有力と思える経路がはっきりした段階で、それを様々な方向から裏付ける実験系を立案、推進し,証明を試みる。 十分にまとまった段階で、学術論文、総説、国内外の関係学会、所属研究所のホームページおよび広報誌に発表する。
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