研究課題
従来のMSC研究では、骨髄や脂肪組織等から回収した細胞を培養皿上にて増殖させ、その細胞をMSCとして研究に使用している。この実験系では、生体内のMSCの性質が再現しているとは言い難く、MSCの個体レベル(in vivo)での性質の多くは謎に包まれている。つまり、MSCからの各分化細胞への階層性/系譜の分子的理解は、造血幹細胞のそれとは異なり、ほとんど進んでいないと言える。前年度までの成果より、Prx1とSca1 が共陽性なMSCが最も幹細胞性の高いMSCであり、まずSca1陰性となり、次にPrx1陰性 なOsterix陽性細胞となり、そして成熟した骨芽細胞となる、という骨形成への分化過程の詳細を明らかにした。また、Prx1+Sca1+細胞からPrx1-Sca1-Osx+細胞になる段階までの間に、Runx2が骨形成のうえで必須の働きを持つことが分かった(Takarada et al, Development, 2016)。同定したPrx1+Sca1+MSCから一段階分化したPrx1+Sca1-細胞は、2種類のMSCマーカーにより細分類されることを本年度は突き止めた(未発表)。それぞれの分化段階の細胞をCell sortにより分離し、次世代シークエンサー(HiSeq)を利用したRNAseq解析を行い、各populationにて発現する遺伝子セット情報を得た。遺伝子発現を網羅的に解析することで、細胞系譜の変遷過程における遺伝子発現変化を捉え、各分化段階で選択的・特異的に働く遺伝子の同定や、pathway解析をすることで分化途中の各細胞での重要シグナル経路を理解することが可能である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
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