研究課題
本研究の目的は、血管内皮および壁細胞に発現するReckの血管新生における役割を明らかにすることであった。この目的は、2種の組織特異的Reck欠損マウス(Reck-flox;Tie2-Cre、Reck-flox;Sm22-Cre)のin vivo(組織化学)、in vitro(aortic ring assay)での解析により達成された。すなわち、壁細胞Reckの欠損は、全身性Reck欠損同様、胎生中期致死形質を与えるのに対し、内皮細胞Reckの欠損は、脳血管異常を伴う胎生後期致死形質を与えること、また、Reckは微小血管の出芽頻度と安定性を制御し、内皮細胞と壁細胞の正しい相互作用と基底膜形成に必須であることが示された(AlmeidaらSci Rep 2015)。今年度、内皮細胞(特にTip Cell)Reckが、Gpr124と恊働してWnt7シグナルを増強することが報告され、脳血管異常の理由が明らかとなったため、この経緯を解説する総説を共同執筆した(野田らCancer Sci.)。発がんに関連する2つの成果も得られた。第一に、オミックス・データにおいて二成分(分子)間の相関性を評価する新たな手法を考案し、これを、がん細胞の上皮-間葉転換に伴うRECK発現亢進の抑制に関わるmicroRNA候補の絞り込みに応用した(王ら Cancer Informatics)。第二に、RECKプロモーター領域CpGメチル化(RPM)の簡便な検出法を樹立し、RPMがルミナル型乳癌の薬剤感受性予想に役立つ可能性を示した(施らOncotarget)。また、国際共同研究において、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬がReck発現亢進等を介して心臓線維芽細胞の遊走と分裂を抑制し、線維症を軽減することを見出した(SomannaらHypertension Res.)。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件)
Oncotarget
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