研究課題
ポリコーム複合体 PRC2(Polycomb repressive complex 2)はヒストンH3の27番目のリジン残基(H3K27)をメチル化して、転写抑制に寄与するとされるタンパク質複合体である。申請者らは、以前に難治性造血器腫瘍である骨髄異形成症候群 (MDS)において、PRC2の構成因子EED伝子の変異を見出し、 同定された変異のすべてがPRC2複合体の機能欠失に寄与することを明らかにした。EEDの機能欠失と造血器腫瘍の病態との関連が示唆される。造血器腫瘍発症に至る分子基盤を明らかにすることを目的として、同定された疾患関連EED遺伝子変異のひとつI363Mを有するノックインマウスを作製した。ホモマウスは胎生中期に致死となり、一方でヘテロマウスはメンデルの法則に従い出生した。ホモ接合体由来の胎仔繊維芽細胞ではH3K27のトリメチル化レベルは顕著に低下しており、へテロ由来の細胞においても、トリメチル化レベルの低下が観察された。I363M変異体が生体においてPRC2の機能欠失型変異として機能していることが示された。ヘテロマウスに白血病レトロウイルスを感染させ、白血病発症感受性について検討をすすめている。
2: おおむね順調に進展している
I363M変異が個体レベルで、EEDの機能欠失型変異として機能していることが明らかとなった。また、造血器腫瘍感受性について検討をおこなうためのアッセイについても進行中である。おおむね順調に進行している。
造血組織から調製した細胞を用いて、フローサイトメトリーによる表面マーカー解析や造血コロニーアッセイをおこない、造血機能を解析することにより、変異が正常造血に与える影響を解析する。骨髄移植実験によって、表現型が細胞自律的なものか否かを検討する。また、末梢血血球数、表面マーカー、細胞形態を経時的に観察することにより、当該変異の造血器腫瘍の病態への関与について検討する。
経費で購入予定としている消耗品(抗体など)が、次年度に安価で購入できることが判明したため、当該年度の所要額と実支出額とに差額が生じ、次年度使用額が発生した。
主要な用途は、抗体や、機器の使用に必要な消耗品などに使用する予定である。
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Blood
巻: 125 ページ: 印刷中