研究課題/領域番号 |
26460397
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
仁科 隆史 東邦大学, 医学部, 助教 (50598365)
|
研究分担者 |
小島 裕子 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60231312)
出口 裕 東邦大学, 医学部, 助教 (10287526)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 修復 / レポーターマウス / 大腸炎 / IL-11 / 大腸がん / IL-6サイトカインファミリー / 恒常性 / 粘膜 |
研究実績の概要 |
消化管の恒常性機構の破綻は慢性炎症性疾患やがんの発生と深い関わりがあることが示されているが、その詳細なメカニズムに関して未だ不明な点が多い。本年度では研究計画に従い、以下の三項目の解析を行った。 (1: 腸炎時におけるIL-11の役割) 腸炎発症時におけるマウス病理像をIL-11受容体欠損マウスと対照群である野生型マウスとで比較した。その結果、粘膜上皮の傷害が見られ始める早期に、IL-11受容体欠損マウスでは粘膜上皮細胞の細胞死が亢進しており、病理像の増悪も認められた。すなわち、IL-11は粘膜バリア構造維持の促進に寄与していることを示す結果が得られた。
(2: 粘膜炎症時におけるIL-11産生機構) IL-11の産生機構を明らかにする目的で、産生誘導因子の探索を行った。具体的に、腸炎発症に伴い発現が亢進する分子の遺伝子欠損マウスおよび中和抗体を用いて探索を行った。その結果、がんの増悪に関与することが報告されているサイトカインに対する中和抗体を用いた際に、IL-11の発現が有意に減少することが判明した。また抗生物質を飲水させ無菌状態にした後で腸炎を誘導した場合にも、IL-11の産生が認められなくなることを見出した。現在、具体的なこのサイトカインの産生細胞を特定するとともに、どのような機構を介して腸内細菌がこれらの機構に関わりを持つのかを解析している。
(3: IL-11産生細胞の同定) IL-11産生細胞の特徴を明らかにする目的で、腸炎時のIL-11産生細胞をセルソーターを用いて分取し、DNAマイクロアレイ解析を行ったところ、ゲノムワイドに特徴的に発現している遺伝子を同定した。その結果IL-11産生細胞は、組織修復や管腔形成だけでなく、腫瘍形成に関わる遺伝子を高く発現している細胞であることが明らかとなった。現在、これらの分子が蛋白質レベルとどの程度相関しているか解析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始からの課題であった(1)腸管炎症時におけるIL-11の役割の解明、(2)粘膜炎症時のIL-11産生機構の解明(3)IL-11産生細胞の特徴という項目に関して研究を進めた結果、今後の研究の進展において基盤となる研究成果を得ることができていると考えられる。また、IL-11の産生機構に関しては、当初予期していなかったがん発生機構ともつながる知見を得られ始めていることから、計画以上に研究を発展させることができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までに腸炎の誘導に伴うIL-11の産生は、腸炎時に発現亢進が認められるサイトカイン依存性に誘導されることを見出している。しかしながら、このサイトカインがどのような細胞から産生されているのか、また腸内細菌との関連性があるのかがが不明であるため、今後これらの点を明らかにしていく。また、IL-11の産生細胞に関しても、詳細な解析を進めることで、その細胞の特徴をより明確にする。そして、IL-11の具体的な標的細胞ならびに、そのメカニズムに関しても組織学的解析を起点に分子生物学的、細胞生物学的手法をも用いて明らかにしていきたい。また、現在までに得られている知見の多くが大腸がんの発生と増悪に関与していることが報告されていることから、これらの不明点を明らかにしていくことは、大腸がんの進展メカニズムの理解にもつながると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
旅費で使用予定だった分を研究費に充てたが、研究計画のプロジェクトの中で進捗状況の若干の差異があったため余った。無理に償却せずに、次年度と含めて試薬購入に充てた方が有益に使用することができると考えたため繰り越した。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究経費は主に試薬などの消耗品、マウス購入費に充てる。
|