研究課題
消化管恒常性の破綻は、慢性炎症性疾患やがんの発生と深い関わりがあることが示されているが、その詳細なメカニズムに関しては未だ不明な点が多い。本年度では、研究計画に沿い以下の三項目に着目して解析を行った。(1 : 腸炎時におけるIL-11の役割) 前年度までに我々は、IL-11は粘膜バリア構造維持の促進に作用していることを見出した。そこで、IL-11下流で活性化される転写因子STAT3の活性化を指標にIL-11の標的細胞の探索を行ったところ、IL-11受容体欠損マウスでは上皮細胞においてSTAT3のリン酸化が減少していることが示された。またこの際に上皮細胞の細胞死が亢進していたことから、IL-11は上皮細胞に作用することで、粘膜保護を増大させていることが示唆された。(2: 腸炎時におけるIL-11の産生機構) 現在までに抗生物質を用いた解析から腸内細菌の存在がIL-11産生には、必須であることを見出している。そこで、自然免疫シグナルの活性化に必須な分子の遺伝子欠損マウスを用いて解析を行った、その結果、この分子非依存的に大腸炎に伴ってIL-11が産生されていることが示された。すなわち、腸内細菌が直接自然免疫受容体を介してIL-11の産生を促進しているのではなく、腸内細菌の粘膜固有層への侵入により活性化される他の機構を介して促進されていることが示された。(3: 腸炎時におけるIL-11の産生細胞の同定)レポーターマウスの解析から明らかになった結果が、炎症誘発性大腸癌時のIL-11産生細胞と一致するかを調べるために、IL-11レポーターマウスに炎症誘発性大腸癌マウスモデルを作出し解析した。その結果、炎症誘発性大腸癌マウスモデルにおいても同様の細胞がIL-11を産生していることを見出した。現在、ヒトにおいても同様に一致するかを調べるために、ヒト検体を用いた解析の準備を進めている。
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