研究課題/領域番号 |
26460401
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
浅野 謙一 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (10513400)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マクロファージ / CD169 / シアロアドヘジン / 炎症性腸疾患 / CCL8 |
研究実績の概要 |
これまでの研究で我々は、CD169分子を発現するマクロファージの亜集団が消化管粘膜固有層に常在し、腸炎の進展に深く関与することを突き止めた。さらにCD169マクロファージ特異的に産生される炎症関連分子の一つ、CCL8/MCP-2を同定した。 1)抗CCL8抗体の腸炎抑制効果:昨年度、我々は抗CCL8抗体がDSS腸炎の臨床症状や病理所見を改善することを証明した。IgG遺伝子のCDR配列をシークエンスし、炎症性腸疾患に対する医薬組成物として特許出願を準備している。 2)腸炎発症時にCD169陽性マクロファージ選択的に産生される他のサイトカインの探索:CD169マクロファージを消失した場合に比較し、抗CCL8抗体の腸炎抑制効果は部分的であった。これはCD169マクロファージがCCL8以外にも何らかの炎症調節物質を産生する可能性を示すが、TNF, IL-10,IL-23等の炎症性サイトカイン発現量はCD169陰性の亜集団と同程度かあるいはそれ以下だった。 3) 生体内におけるCCL8の産生誘導要因の探索:CD169マクロファージ消失時にはCCL8産生が著明に減少することから、CD169マクロファージはCCL8の主たる産生細胞である可能性が高い。消化管のCD169マクロファージにCCL8産生を誘導する要因として、腸内細菌由来成分(PAMPs)と上皮死細胞由来成分(DAMPs)の関与を考えた。抗生剤カクテルを4週間飲水投与し腸内細菌を消去したマウスにDSS誘導大腸炎を誘導した。抗生剤非投与マウスに比べるとCCL8産生は減少したが、消失はしなかった。この結果は菌体成分がCCL8産生に寄与するものの、生体には腸内細菌以外にもCCL8産生誘導要因、例えば死細胞由来因子が存在することを示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CCL8の産生誘導要因の同定はCD169マクロファージによる疾患形成機序を理解するうえで重要である。これまでの研究で、腸内細菌がCCL8産生を促進すること、死細胞由来成分の関与を示す証拠が得られたことから、本研究課題はおおむね順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
消化管上皮は非常にターンオーバーの速い組織の一つであり、粘膜に常在するCD169マクロファージは上皮死細胞に由来する因子を認識し、CCL8を産生する可能性が考えられる。そこで、小腸上皮由来細胞株に細胞死を誘導し、その培養上清をCD169マクロファージに添加することでCCL8産生が促進するか検討する。もし上皮死細胞培養液中にCCL8産生要因が含まれることが確認できたならば、CD169陽性マクロファージをラットに免疫し、そのラットのB細胞とミエローマ細胞を融合してハイブリドーマライブラリーを作製する。死細胞培養液のCCL8産生促進作用をキャンセルする抗体産生クローンを選別する。そして当該抗体が認識するマクロファージの受容体を質量分析等の手法を用いて同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗CCL8抗体の選別とクローニング、デキストラン硫酸誘導大腸炎の抑制効果の検討が計画よりも早く完了した。また研究目標をCCL8産生誘導機構の解明に絞り、マイクロアレイ、サイトカインアレイに計上していた予算を減額した。その結果、ELISA試薬、培地・血清等の一般試薬、検査委託費、実験動物の購入・維持費が減額できたため繰り越しが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した研究費は主としてCCL8産生誘導要因の探索研究に活用する。免疫動物(アルメニアハムスター)、フローサイトメトリー用抗体や抗体精製用のProtein A-セファロースビーズを購入する。
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