研究課題
私達はこれまでに、ヒトメラノサイト及びメラノーマ細胞の糖鎖合成酵素遺伝子群の発現レベルを網羅的に解析し、メラノーマでは、酸性スフィンゴ糖脂質のGD3及びGD2の合成酵素遺伝子が発現増強し、GM1合成酵素遺伝子の発現が顕著に低下していることを明らかにした。また、腫瘍の発生においては細胞と微小環境との相互作用が重要であるが、UVB照射したケラチノサイトの培養上清中に確認された炎症性サイトカインTNFα、IL-1、及びIL-6によりメラノサイトでGD3合成酵素遺伝子が発現誘導されることを明らかにした。本研究においては、メラノサイトではTNFαの刺激、あるいはメラノサイトの分化や色素形成を促進するcAMPシグナルの除去により、GD3合成酵素遺伝子の発現レベルが短時間で上昇することを明らかにした。しかし、GD3高発現メラノーマ細胞ではTNFα刺激及びcAMP刺激によるGD3合成酵素遺伝子の発現レベルの変動は起こらなかった。また、TNFαによりGD3合成酵素遺伝子の発現レベルが上昇したメラノサイトにTNFαの下流のシグナル分子であるIKKの阻害剤を添加するとGD3合成酵素遺伝子の発現は抑制され、更にメラノーマ細胞においてもIKK阻害剤によりGD3合成酵素遺伝子の発現は著しいく抑制された。Western BlottingによりIKKのリン酸化を検討した結果、メラノーマ細胞では無刺激状態でもIKKのリン酸化バンドが検出され、IKK阻害剤によってリン酸化は抑制された。以上より、正常細胞と癌細胞では癌関連糖鎖合成酵素遺伝子の発現制御機構が異なることが明らかになった。今後、メラノサイトとメラノーマにおけるNK-κBシグナル伝達分子の活性化の差異を解析し、癌治療の基盤研究へと進展させる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件)
Cancer Science
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