研究課題
1.既知原因遺伝子群の変異解析: 次世代シーケンサー(NGS)を用いて67種の既知の心筋症原因遺伝子の変異解析の系を立ち上げ、全国多施設より送付された主に肥大型心筋症(HCM)、拡張型心筋症(DCM)患者に、多くの病的変異を同定し、結果を各施設に詳細に報告した。特にHCMに関して、成人の非家族例では10数%程度しか同定されない遺伝子変異の同定率が小児、若年発症非家族例では70%以上と高率であり、de novo例や重複変異が多く同定され、予後の悪い若年発症例での変異解析意義を明らかにした。さらにHCMでは新規となるDesmin遺伝子のホモ接合体変異を見出した。また、心室中部閉塞型肥大型心筋症の変異解析では、通常のHCMと異なる病因の可能性を示した。2.HCM多発大家系を対象とした網羅的変異解析:HCM多発家系に対しNGSを用いたエクソーム解析を施行し、家系内の罹患者すべてに共通に見出され、国内外の健常者集団に見出されない新規の心筋症原因候補遺伝子Xの変異を同定した。さらに他のHCMに複数の別の変異を見出した。Xは液性因子をコードしているが、その機能はこれまで不明である。Xは心肥大抑制因子であると仮説をたて、複数の培養心筋細胞を薬剤刺激により肥大させ、Xを投与したところ、比較的低濃度で肥大マーカーが抑制された。現在ゲノム編集によるXの変異細胞や、変異動物を作成し、変異による肥大誘発、またXの抑制メカニズムをさらに多面的に検討中であり、Xを用いた新規治療法開発へ向けて進めている。3.原因不明症例の候補遺伝子解析: 新規心筋症候補遺伝子Aの複数の欠損変異をDCM患者に見出し、HCMにはAの複数のミスセンス変異を見出した。これらは、健常者集団には認められず、in-silico解析で機能変化が強く予測される変異であった。ゲノム編集による変異細胞を作成し、さらなる解析を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
BMC Cardiovasc Disorders
巻: 16 ページ: 83
10.1186/s12872-016-0262-y