研究実績の概要 |
前年度(H26年)に、膵神経内分泌腫瘍において progesteron receptor subtype A : PRA が、ヒトランゲルハンス島における発現より低下しており、さらに増殖能の高い腫瘍において発現が低下していることを確認した。また、PRAを強制発現させた腫瘍細胞において、細胞周期に細胞周期関連遺伝子である c-fos, c-jun, CCND1 の発現が低下していることが確認された。本年度(H27年度)は、PRAの腫瘍細胞増殖抑制に、細胞周期制御機構が関連していることを裏付けるために、細胞周期に関連する遺伝子群の発現状況を RT-PCRを用いて網羅的に解析し、PRA強制発現株および非発現細胞株での発現状況を比較した。この結果、PRA非発現神経内分泌腫瘍細胞株においては、プロゲステロンの存在下において細胞周期G1からS期の制御に関与しているE2F1, CCNA2, CCNB1, CCNB2, CDK1の up-regulation が認められたが、PRAを強制発現させた細胞株においてはプロゲステロンの存在下で、これらの遺伝子の down-regulation が確認された。この結果は、プロゲステロンが有する細胞増殖促進作用が、PRAの発現によって負に制御されていることを示し、前年度にヒト組織で確認されたPRAの細胞増殖抑制作用を裏付け、その機序に関係する新しい結果といえる。これらの結果は、国内外の学会で発表を行い、現在、論文を作製中である。
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