研究課題/領域番号 |
26460415
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
味岡 洋一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80222610)
|
研究分担者 |
若井 俊文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50372470)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 大腸癌の発生 / 炎症性発癌 / 腺腫の癌化 / DNA二重鎖切断 / DNA損傷修復応答 / 蛍光二重免疫染色 |
研究実績の概要 |
大腸癌の発生経路として、炎症性発癌(潰瘍性大腸炎の炎症粘膜の癌化)とadenoma carcinoma sequence (ACS)(腺腫からの癌化)で、DDR(DNA修復応答)の破綻がどのように関与しているかを比較・検討した。ホルマリン固定パラフィン包埋内視鏡的切除および外科切除例を対象とした。癌を合併しない外科切除潰瘍性大腸炎(UC)20例、UC粘膜に発生したdysplasia14病変、同粘膜内癌9病変、同粘膜下層以深浸潤癌9病変、炎症性腸疾患を合併しない大腸に発生した腺腫由来粘膜内癌8病変、同粘膜下層以深浸潤癌16病変、を検討した。DDRの検討には、γH2AXと53BP1の蛍光二重免疫染色を行い、両者の共局在率を各病変で算定した。DNA損傷(DSB)部位にはγH2AXと53BP1が動員され、DSBの修復が行われる(DDR).従って、蛍光二重免疫染色でγH2AXと53BP1の共局在が認められるものはDDRが正常に機能し、一方共局在が認められない場合は、DDRの破綻が起きていると推定することができる。
以下の結果が得られた。 1.UCの非腫瘍性粘膜では、炎症活動期が寛解期に比べγH2AXと53BP1の共局在(以下共局在)率が有意に低かった(P=0.022)。2.UCの非腫瘍粘膜では、UC病脳期間と共局在率との間に有意の負の相関があった(P=0.040, Rs=-0.464)。3.UCのdysplasia、粘膜内癌、浸潤癌では、浸潤癌はdysplasiaに比べ有意に共局在率が低かったが(P=0.043)、dysplasiaと粘膜内癌、粘膜内癌と浸潤癌との間には有意差はなかった。4.UCの粘膜内癌は腺腫由来粘膜内癌に比べ、共局在率が有意に低かった(P=0.007)。5.UCの浸潤癌は腺腫由来浸潤癌に比べ、共局在率が有意に低かった (P<0.001)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由) 大腸癌の発生経路には、①de novo発癌(正常粘膜からの癌化)、②adenoma carcinoma sequence (ACS)(腺腫の癌化)、③serrated neoplasia pathway (SNP)(SSA/Pに代表される鋸歯状病変からの癌化)、④ inflammation dysplasia carcinoma sequence(炎症性発癌)、の4つの経路がある。本研究は、これらの経路にDNA損傷修復応答がどの様に関与しているかを明らかにすることにある。 前年度まではDNA損傷(DSB:DNA二重鎖切断)の観点からの検討を行ってきたが、平成27年度は、DSBに対する修復応答(DDR)の状態を解析した。その結果、UCの慢性持続性炎症粘膜では腫瘍の発生以前から既にDDRの破綻が起きていること、炎症性発癌過程では、腺腫の癌化に比べ、より早期(粘膜内癌の時期)からDDRの破綻が生じている可能性があることが、明らかなとなった。このことは、本研究開始時点で予想された結果を裏付けるものである。
|
今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 大腸癌の発生経路の中で、①de novo発癌の検討が残っている。その解析を行うと同時に、大腸癌や前癌病変の発生に関与しているとされるKRAS、BRAF、p53遺伝子変異、CIMP (CpG island methylater phenotye)やMSI (microsatellite instability: 遺伝子不安定性)の解析も合わせて進めてゆく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ガラス器具の購入が予定していたよりも少なかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の遺伝子検索用試薬購入費に当てる予定。
|