研究実績の概要 |
原発性胆汁性肝硬変(PBC)で出現するピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC)に対する自己抗体(AMA)の出現および慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)による胆管消失の発生機序について、PDCに関連する解糖系エネルギー代謝について解析した。本年度は、胆管癌由来細胞(HuCCT-1),肝細胞癌由来細胞(HepG2)を用いて、通常培地, 無血清培地, 無グルコース培地でのperoxisome proliferator-activated receptor γ coactivator 1α(PGC-1α)発現亢進介在性エネルギー代謝の変換、酸化ストレス亢進、さらには抗酸化剤であるN-アセチルシステイン(NAC)によるストレス回避およびアポトーシス誘導抑制について検討した。NACを0, 3, 10 μMの終濃度で添加し、ミトコンドリア代謝 (WST-1法) および DNA 合成量 (IdU法) を測定した結果、無血清培地でミトコンドリア代謝および DNA 合成量の低下が認められた。HepG2におけるミトコンドリア活性およびDNA合成低下はNAC添加にて更に低下し、明らかな改善傾向はみとめなかった。HuCCT1でのにおけるミトコンドリア活性およびDNA合成低下はNAC添加にてミトコンドリア活性の回復したが、DNA合成については有意な変化は認めなかった。肝細胞癌および胆管癌由来の癌細胞培養株を用いた検討にて、starvationによるPGC-1α介在性エネルギー代謝の変化及び抗酸化剤による反応性を検討したが、癌腫由来の違いによる反応性の相違が認められ、癌固有の応答であることが示唆された。PBC胆管での病態を模倣するためには非癌性のヒト胆管細胞、肝細胞を用いた更なる検討が必要と考えられた。
|