研究課題/領域番号 |
26460418
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
横崎 宏 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10200891)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 病理学 / 癌 / 食道 / マクロファージ / 癌・間質相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究では食道扁平上皮癌の発生・増殖・進展におけるマクロファージ(MΦ)/癌細胞相互作用を培養モデル系で解析し、分子病態を明らかにするとともに、臨床検体を用いた検証を通して早期病変の正確な病理組織診断に応用することを目的として、食道扁平上皮癌細胞株培養上清によりM2分化したMΦにおいて特異的に発現変化する分子の解析【研究1】、食道扁平上皮癌細胞や食道扁平上皮由来細胞とM2MΦの細胞生物学的相互作用の解析【研究2】、上皮内腫瘍形成におけるM2MΦの役割の解明と病理診断への応用【研究3】を並行して実施する。平成26年度は【研究1】のマイクロアレイ解析を終了し、得られた候補遺伝子の一部について【研究2】の細胞生物学的ならびに分子生物学的解析を完了した。また、【研究3】の予備実験を完了した。 【研究1】TE-8食道扁平上皮癌培養上清添加TPA刺激THP-1において特異的に発現誘導されるCyr61はMEK/ERK経路を介してMΦのCD204発現と遊走を促進した。次に、正常ヒト末梢血単球由来MΦにTE-8, -9, -15培養上清添加したとき、共通して発現変化する遺伝子(誘導遺伝子233、抑制遺伝子232)をマイクロアレイ解析により抽出した。その内、GDF-15は食道扁平上皮癌微小環境においてMΦおよび癌細胞から分泌されAKTおよびERK経路を介して癌細胞の増殖を促進した。 【研究2】臨床病理学的にCyr61高発現食道癌症例は低発現例に比較して癌組織内CD204陽性MΦ数の高いものが有意に多く、高頻度にリンパ節転移を認めた。GDF-15高発現食道癌症例は低発現例に比較して、深達度、脈管侵襲、リンパ節転移、臨床病期等の悪性度因子が高く、不良な予後を示す事を明らかにした。 【研究3】不死化ヒト食道扁平上皮細胞とサイトカイン刺激によりM1およびM2に分化させたMΦモデルの共培養により上皮細胞にp38 MAPK活性化を介した増殖促進作用がもたらされる事を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究1、2に関して食道扁平上皮癌細胞株培養上清によりM2分化したマクロファージにおいて特異的に発現変化する代表的な分子Cyr61とGDF15の抽出と、食道癌の発生、進展におけるそれらの役割を明し、2報の英文論文を出版することが出来た。研究3についても当初の作業仮説を支持する研究成果が蓄積されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
【研究1】食道扁平上皮癌細胞株培養上清によりM2分化したマクロファージにおいて特異的に発現変化する分子の解析 ① 食道扁平上皮癌細胞株培養上清に含まれるM2分化誘導因子を明らかにするためサイトカインアレイを実施する。② M2分化系におけるマイクロRNAアレイ解析を追加する。 【研究2】食道扁平上皮癌細胞や食道扁平上皮由来細胞とM2マクロファージの細胞生物学的相互作用の解析 ① M2分化したマクロファージとの共培養により食道扁平上皮癌細胞に特異的に発現変化する遺伝子およびその制御を司るマイクロRNAをアレイ解析により網羅的に探索する。② 食道扁平上皮癌細胞/食道扁平上皮由来細胞とマクロファージの直接接触による細胞生物学的相互作用を三次元共培養で検討する。 【研究3】上皮内腫瘍形成におけるM2マクロファージの役割の解明と病理診断への応用 ① Cyr61、GDF15以外の研究1、2のアレイ解析で抽出された癌細胞/マクロファージ相互作用で発現変化する遺伝子産物の進行食道癌ならびに食道上皮内腫瘍における発現解析を継続し、食道上皮内腫瘍の特徴的形態学的構築である上皮細胞増殖と異型血管形成に主たる役割を演ずる因子群を特定する。② 特定された因子群の発現を、正常食道粘膜、食道炎、食道上皮内腫瘍の生検標本で免疫組織化学的に検討し、食道上皮内腫瘍に特異的なマーカーを抽出する。
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