研究課題
子宮頸部腺癌は増加傾向にあり、子宮頸癌癌の25%を占めている。また、頸部扁平上皮癌と比較して頸部腺癌の予後は悪い。しかし、腫瘍としての組織発生学的検討、分子生物学的形質解析、予後改善を目指した治療戦略に関わる基礎検討などはほとんどない。本研究は、手術材料および培養細胞を用い、ヒト正常培養頸部腺上皮と頸部腺癌でタイト結合関連タンパク質(TJPs)の発現変化及び発現調節機構を詳細に解析し、頸部腺癌におけるTJPsの新規分子マーカーとしての有用性を明らかにする事を目的としている。平成26年度は以下の実験を行い、結果を得ている。1)子宮頸部腺癌切除材料を用いてTJPsの免疫染色を実施した。複数のTJPsが正常頸部腺上皮と比較して腺癌組織で異常発現していた。統計解析の結果、いくつかのTJPsの免疫染色は腫瘍と非腫瘍の判別能が高いことが確認された。2) 1-2回の継代が可能なヒト正常頸部腺上皮細胞の培養に複数回成功した。走査型電子顕微鏡観察で上皮細胞特有の形態であること、セルブロックのHE染色と免疫染色から腺上皮であることを確認した。3)子宮頸部腺癌細胞株での各種刺激によるTJPsの発現変化を検討した。エストロゲン、プロゲステロン、EGF、TPA等への曝露により複数のTJPsの発現増加が確認された。実験に用いる細胞株については、Multiplex PCR法によりHPV感染の有無及び感染HPVの型を同定し、比較検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
約50症例の手術材料を用いた免疫組織学的検討を行い、免疫染色および染色態度の評価を終了している。統計学的検討により、非腫瘍組織と腫瘍組織の間で判別能高く発現態度が異なるTJPsを見出している。これらの候補タンパク質については、細胞株などを用いた更なる検討を行い、発現変化の妥当性を確認した後に、生検材料を用いた検討を行う予定である。ヒト正常頸部腺上皮細胞の初代培養に複数回成功している。数回の施行に留まっているが、初代培養と1-2回の継代も可能であった。腺上皮であることを証明するために、走査型電子顕微鏡で細胞間接着の確認と絨毛構造を確認している。また、セルブロックでは扁平上皮細胞マーカーが陰性であることを確認している。本培養法を用いて、ヒト正常頸部腺上皮細胞の初代培養から、TJPs等を含めた発現解析を行う予定である。頸部腺癌細胞株については、各種TJPsの発現調節機構の解明を目指した検討を行っている。総合するとおおむね順調に進展していると判断する。
・生検材料を含めた組織材料の免疫組織学的検討を行い、病理診断での診断マーカーとしての有用性を評価する。・頸部腺癌細胞株を用いたTJPsの発現調節機構の解明を進める。・頸部腺癌細胞株を用い、TJPsの強制発現、ノックアウト株を樹立し、浸潤能、増殖能、ヌードマウスを用いたin vivoでの造腫瘍能、転移能の解析を行う。・頸部腺上皮の培養とTJPsの解析を行う。特に手術材料で確認された候補タンパク質の発現調節について、癌細胞株との差異に注目した解析を行う。
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Medical Molecular Morphology
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