研究課題
子宮頸部腺癌は増加傾向にあり、子宮頸癌癌の25%を占めている。また、頸部扁平上皮癌と比較して頸部腺癌の予後は悪い。しかし、腫瘍としての組織発生学的検討、分子生物学的形質解析、予後改善を目指した治療戦略に関わる基礎検討などはほとんどない。本研究は、手術材料および培養細胞を用い、ヒト正常培養頸部腺上皮と頸部腺癌でタイト結合関連タンパク質(TJPs)の発現変化及び発現調節機構を詳細に解析し、頸部腺癌におけるTJPsの新規分子マーカーとしての有用性を明らかにする事を目的としている。平成27年度は以下の実験を行い、結果を得ている。1)子宮頸部腺癌切除材料を用いてTJPsの免疫染色を実施した。複数のTJPsが正常頸部腺上皮と比較して腺癌組織で異常発現していた。統計解析の結果、その中でもCLDN1, JAM-Aの免疫染色は腫瘍と非腫瘍の判別能が高いことが確認された。染色局在をタイト結合領域、膜全周性など判別して評価することでその判別能は更に高くなった。以上の結果は論文としてまとめ、報告している。2)子宮頚部腺癌細胞株に対するエストロゲン刺激におけるTJPsの発現変化を検討した。複数の細胞株で発現変化が確認され、その中でもCLDN1の発現増加は多くの細胞株で再現性をもって確認された。3)子宮頸部腺癌細胞株でCRSPR-Cas9システムを用いてCLDN1欠損株を作成した。通常の細胞株と比較してCLDN1欠損株では、WST-8、コロニー形成試験で確認される増殖能が顕著に抑制され、CLDN1の癌細胞悪性化への関与が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
約50症例の手術材料を用いた免疫組織学的検討を行い、統計学的検討により、非腫瘍組織と腫瘍組織の間で判別能高く発現態度が異なるTJPsを見出した。この結果について、論文としてまとめ報告した。このうち、CLDN1に着目し、細胞株での発現調節機構の解析を行っている。また、癌細胞株における発現の意義を明らかにするため、CLDN1欠損株の作成を試み、複数の細胞株で3個以上の欠損株を確立している。今後は、それらの欠損株を用いてCLDN1の発現が癌細胞株の増殖能、遊走能、浸潤能などに及ぼす影響を解析する予定である。総合するとおおむね順調に進展していると判断する。
・頸部腺癌細胞株を用い、CLDN1の強制発現、ノックアウト株を樹立し、浸潤能、増殖能、ヌードマウスを用いたin vivoでの造腫瘍能、転移能の解析を行う。・頸部腺上皮の培養とTJPsの解析を行う。特に手術材料で確認された候補タンパク質の発現調節について、癌細胞株との差異に注目した解析を行う。・頸部腺癌細胞株を用いたCLDN1の発現調節機構の解明を進める。とくにエストロゲン依存性調節機構に着目する。
すべて 2016
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Medical Molecular Morphology
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Histology and Histopathology